研究概要 |
申請者(沈)は、昨年度の一連の研究で晋語と中原官話の接触地帯においてどちらの強勢方言にも属さない混合方言地域を発見している。今年度では、GIS という情報科学の技術を取り入れ、これまでの研究を発展させる形で、混合方言の音韻的特徴およびその成立要因を明らかにすることを目指してきた。 今年度の主要成果として挙げられるのは,3つである.1つは,中野尚美・川崎廣吉・沈力 (2013) 「GISを用いた言語伝播の推定―交流度計算方法の再検討―」『文化情報学』(同志社大学文化情報学会)である.本論文では,先行研究で申請者(沈)によって提案されている交流度の計算方法をさらに厳密化するということである.もう一つの成果は,沈力(2013, 7,14)「南北方言データから読み取る「着」の文法化過程-持続と完了を中心に-」(中日理論言語学国際フォーラム2013, 於同志社大学今出川キャンパス)である.この研究では,南方方言と北方方言の間にも伝播の可能性が含まれることを主張している.最後に,研究成果の公表や国際交流の促進のための国際フォーラムを2013年7月14日に開催したということである.午前の部「地理方言学研究の展望」と題したシンポジウムでは、喬全生氏、馮良珍氏、大西拓一郎氏、岩田礼氏がそれぞれ興味深い研究発表をおこなった。全体質疑の時間には、コメンテーターからも会場からもコメントや質問が続出し、活発な意見交換がおこなわれた。午後の部は「方言文法の行方」と「資源としての方言」と題し、5件の研究発表がおこなわれ,佐々木冠氏・當山奈那氏(共同発表)、井上優氏、遠藤雅裕氏、定延利之氏・河崎みゆき氏(共同発表)、沈力(本科研代表者)がそれぞれの研究成果を発表された。
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