研究課題/領域番号 |
23652094
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
本田 盛 関西学院大学, 総合政策学部, 教授 (30132319)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 生成文法 / 日本語方言 / マイクロバリエーション / 統語論 |
研究概要 |
本研究は生成文法理論、とりわけミニマリスト言語理論におけるマイクロパラメータの視点から日本語の方言を統語的に分析し、これまで社会言語学を中心に行われてきた方言研究を言語内部の微小変異の研究としてとらえ直し、方言研究の新しい方向をめざすものであり、平成23年度はケセン語のフィールドワークをおこなうことを計画していた。しかし3月11日に起こった東日本大震災により調査対象地域である岩手県大船渡市をはじめ、ケセン語地域が壊滅的な被害を受けた。そのため、調査自体が不可能となり、代わりに文献調査とデータベース作成のための予備研究に着手した。文献研究においては van Craenenbroeck and van Koppen (2006)などのゲルマン語のマイクロバリエーション研究、Poletto (2006) やKayne (2008) などのロマンス語のマイクロバリエーション研究などヨーロッパを中心として多くの研究がみられるが、特にCP領域の統語的性質と方言変異とのあいだに関連性が存在することが示されている。また日本語においても仮説や目的は異なるものの、Saito (1984) や Fukuda (2000) などの先行研究でも同様の事実が議論されている。これらの研究から本研究の方向性や妥当性が間違ってはいないことがわかった。同時に音声と動画を使用した日本語方言統語データベースの作成に関しても海外の研究者と議論をおこなったが、音声のみのデータベースよりも分析のしやすさなど優れた点が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の遅れの最大の理由は東日本大震災によって現地調査を中心とした実証研究ができなかったことである。また震災に関連して当初研究費の交付額の減額がありうるという通達もあり、調査(国外、国内とも)に適した夏期に現地調査がおこなえなかったことも研究の遅れの原因としてあげられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は平成23年度に行えなかったフィールドワークを推進するとともに、ケセン語地域の復興の状況をみながら、同時に奄美諸島や沖縄諸島などこれまでの記述研究が豊富な他の方言地域も含めた研究を進めることも考えている。またCP領域が言語の微小変異に果たす役割がゲルマン語についてこれまで報告されているが、同様の仮説が日本語についても妥当性を持つかどうか精査をおこなうとともに、移動やAgreeなどに関する新たな理論的発展にも目を向けていくつもりである。日本語方言統語データベースの作成はオランダのDynaSandやイタリア語方言データベースなどヨーロッパの実績を参考にしながら、動画を用いた日本語方言データベースの構築という新しい方向性をめざす。動画データベースはこれまでにないものであり、音声のみの記録から動画になることにより、非言語情報も含めてデータあたりの情報量は飛躍的に向上する。それによりデータの編集やマネージメントの容易さが大幅に上がることが期待される。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は東日本大震災により東北地方へのフィールドワークが実施できなかったこと、および大震災の結果、研究費の使用に関しても不透明な時期があり、夏期の出張計画が前もってできなかったことがあった。したがってこれらの研究費が当該年度中未使用に終わった。これらの未使用額は主として平成24年度の調査旅費として使用する予定である。平成24年度の研究費のおもな使用計画は次の通りである。・国内および国外での現地調査および研究交流のための旅費・データ整理およびデータベース構築のための人件費
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