研究課題/領域番号 |
23652101
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研究機関 | 関東学園大学 |
研究代表者 |
小池 康 関東学園大学, 経済学部, 講師 (70334018)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 日本語史 / 日本語学 / 近現代 / モダリティ / 副詞 |
研究概要 |
本研究は、日本語史研究の新たな方法論的視点としての「変遷パタン・モデル」を用いて、特に明治期から現代に到るまでの日本語表現を分析・考察することを目的としている。平成23年度の「研究計画」は、<1.モダリティ表現に対するパタン・モデルの適用可能性の検証>と<2.資料の拡充とデータベース化・コーパス化>というものであった。 まず1の成果としては、モダリティ表現の史的変遷や意味記述に関する先行文献を多数収集することができ、このうち推量のモダリティ表現(モダリティ形式)に関する先行文献の研究結果より、本研究者の唱える「変遷パタン・モデル」が推量のモダリティ表現の変遷過程に対して十分に適用されうることが推察された点が挙げられる。しかし、これは現時点では概括的・皮相的な様相において確認できただけで、今後さらに細密かつ精密な分析・考察を行なっていく必要がある。 また、このようなモダリティ表現を対象とした考察に加え、当初平成24年度以降に研究を遂行する予定であった、依頼表現や可能表現といったモダリティ表現以外に関する諸表現に関する文献も収集を始め、かつこれら先行研究を踏まえた上での用例検索も開始している。この過程において、上記表現の分析・考察に際しては、副詞との共起が大きなヒントとなる場合が多いことに改めて気づいたこともあり、副詞と共起している表現について、検索および分析を進めているところである。 次に、2に関する成果としては、特に「資料の拡充」という点において、明治期から昭和中期にかけての大衆小説を約20作品、2000年以降に出版されたベストセラー書籍約20冊を入手することができたことが挙げられる。前者の中には、絶版になって入手しづらかった作品も含まれていることなども考慮すると、より資料の充実性が高まったと言える。現在は、特に2000年以降に出版された書籍のコーパス化を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究計画」(1.モダリティ表現に対するパタン・モデルの適用可能性の検証、2.資料の拡充とデータベース化・コーパス化)に沿った形で報告する。 まず1については、各種表現に関する先行文献を多種多数収集することができ、かつ「変遷パタンモデル」の適用可能性が認められるという結果を得たことは、一定の達成度があったと認められるであろう。しかし、概括的な側面での分析では妥当性が認められると判断できるが、個別の表現の分析は当初の予定よりも遅れ気味である。この理由としては、明治期以降のモダリティ表現が、それ以前(中古や近世など)の表現よりもヴァリエーションが乏しいため、学術的に関心を引くような現象が認めにくいという点が挙げられる。 2については、「資料の拡充」という点はある程度達成できたように思われる。特に、新たに40作品以上入手することができた点は評価できると思っている。これに対し、「コーパス化」に関しては、大きな進展は見られなかった。その理由としては、特に明治期や大正期に出版された小説類にはルビ付のものが多く、それをスキャニングしても文字を正しく判別できず、かえって大きな労力がかかることが多かったためである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は文献調査が主となる性格のものであるため、今後も日本語史関連の専門書、日本語学関連の専門書、および明治期以降現在に至るまでの小説類を中心に収集していく。 その一方で、一人でできる範囲は限られていることから、今後は補助作業者を使って研究(特にデータのコーパス化)を進めていくつもりである。
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次年度の研究費の使用計画 |
上述の通り、基本的に研究費は書籍購入(もしくは文献複写)に重点的に充てるつもりであるが、平成24年度はより高性能のスキャナーおよび日本語OCRソフトを購入する予定である。 このような物品以外には、補助作業員に対する謝金や学会発表等での旅費に使用する見込みである。
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