本研究は、日本語史研究の新たな方法論的視点としての「変遷パタン・モデル」を用いて、明治期以降の日本語表現を分析・考察することを目的としている。最終年度の平成25年度の「研究計画」は、1:先行研究に対するパタン・モデルの適用可能性の検証(の継続)、2:文献資料データベース(コーパス)での検証、3:研究成果の刊行の3つであり、過去3年間における本研究のまとめとして位置づけられるものである。 まず1の成果としては、本年度はとりたて表現の変遷を行なう予定であったが、前年度までの依頼表現・可能表現・条件表現の分析と考察が進捗しなかったため、本格的に取りかかることができなかった。しかし、研究遂行に必須となる先行研究や資料等の入手は満足できるものであったので、今後これらを活かし、研究の充実を図る所存である。 2のデータベース(コーパス)での検証も、コーパスの構築がなかなか進められなかったため、これも満足のいく結果は得られていない。 3は、上述のように、研究成果が満足には得られてはいないため、現時点での刊行は困難であるが、筋道は明確になってきているので、近いうちに刊行できるよう鋭意研究を進めていきたい。 なお、本研究での「変遷パタン・モデル」は上述の各種表現を対象とし考察を進めていたが、その過程で特にモダリティ副詞(陳述副詞)が文中で用いられた場合と副詞が一語で用いられた場合(副詞一語文)で意味に差異が生じる現象が見られた。そして、この観点からのアプローチも変遷の様相を反映させたものであるとの考えを得ることができ、それを研究成果として発表した。
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