平成25年度までの研究結果を踏まえた、初級の日本語学習者向けの教科書を作成した。平成26年度は、その教科書を実際に使用し、内容を吟味した。教科書の特徴は以下の3点である。 1.コミュニケーションのための内容:個々の状況で必要になる日本語能力を身につけるだけでなく、日本人とより良い人間関係を構築するために必要なコミュニケーションについて初級レベルから学べるよう内容を取り上げた。「初対面での声のかけ方」や「お礼」についてだけでなく、ジェスチャーによる感じ方の違いについても学べるようにした。 2.使えない表現や聞き手への配慮:「先生に相談する」「飲み会に参加する」「時間を守る」といったコミュニケーションの具体的な場面を設定し、日本人の考え方について伝えた。例えば、飲み会では「割り勘」が好まれ、「おごる」ことには特別な意味があること。約束の時間よりも早く来る人が多く、遅れてしまった場合の謝り方など、中国や韓国との違いだけでなく、日本人と外国人の感覚の違いについても言及した。日本語の文法としては間違っていない場合であっても、使わない表現や聞き手に配慮した使い方を学べるよう工夫した。 3.フィールドワークでの実践:座学で知識を学ぶだけでなく、実際にフィールドワークを行った。「地域の魅力」を発信する発表練習や、「ピザを注文する」といった実生活でも使用できるものなどを練習した上で使用した。学習者が学んだ表現を使用する機会を作り、応用することで自分のものとして使えるようになった。 今後は、教科書の内容を更に充実させるとともに、内容について改訂し、出版を目指す。
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