研究課題
前年度は、日本語母語話者(NS)の発話に対して、非母語話者(NNS)が開始した他者開始修復の事例を分析した。今年度は、3人の雑談に現れた他者開始修復のうち、NNSの発話(トラブル・ソース、以下TS)に対してNSが開始した修復を分析対象とした。一般的に、他者開始修復は、あるTSに対して聴き手が修復を開始し、TSの話者がその修復に対処・解決する場合が多い。つまり、会話の参加者が多人数であっても、修復の連鎖は2人によって行われることが多い。しかし、ある発話に対する修復の開始から解決に至るまでの過程に、参加者3人が関わっている事例もある。今年度は特にこのような現象に焦点を当てた。データに現れた事例には3つのタイプが観察された。(1)一つのTSに対して聴き手2人が他者開始修復を行っている例、(2)一つのTSに対して開始された修復が、TSの話者ではなく、もう1人の参加者によって解決されている例、(3)他者開始修復が、TSの話者ではなく、もう1人の参加者に対して開始されている例である。どの事例も、3人がお互いの発話や視線を相互に理解し合い、それに対応しつつ修復の解決に至る過程が観察された。しかし、事例の中には、NNSに対しての配慮と考えられるNSの行為が、同時にNNSの語り手としての立場を侵す可能性を浮かび上がらせるやり取りも観察された。日本語を母語としない学習者と話す際、NS、NNSどちらが開始した修復であっても、適切に解決へと至ることがコミュニケーション上望ましい。しかし、学習者も1人の会話参加者である。本研究で明らかになったように、NNSの語り手としての立場にも十分気を配れるよう、修復過程における相互行為を意識することは、学習者への配慮のあり方への再考を促す。日本語教育、特に教員養成において、この結果は十分応用可能であると考える。
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Proceedings of the 2013 annual conference of the Canadian Association for Japanese Language Education (CAJLE)
巻: 2013 ページ: p.77-81
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