研究課題/領域番号 |
23652135
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
巽 徹 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (10452161)
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キーワード | 4技能を統合した言語活動 / アウトプット重視の英語指導 / 新学習指導要領 / グループ活動 |
研究概要 |
本研究は、複数の技能を関連させて定着を図る英語指導法であるGroup Work Reporting(以下GWR) による学習が、大学生英語学習者の第二言語習得に及ぼす影響について検証し、さらに、GWRなど複数の技能を統合した指導を中学・高校の英語教育において実施するために、授業モデルの構築と中高で活用できる教材開発を行うことを目的としている。 平成24年度の研究では、①大学生英語学習者のGWRにおける英語使用の実態分析、②技能を統合して行う英語指導のための教材開発、③技能を統合した指導のあり方の中高英語教員への提案、の3点に重点を置いて研究を進めてきた。 ①に関しては、昨年度収集した大学生のGWRにおける発話データを用い、学習者の即興による「口頭レポート」とその後の「要約文」、さらには、遅延テストによる「口頭レポート」で用いられた英語表現を比較・分析した。②では、昨年収集した資料やBBCの語学学習サイトにおける素材などを活用し、大学生の学習用、ならびに、英語教員研修用の教材開発を行った。③に関しては、「4技能を統合的に活用する英語授業のあり方」について論文や英語教員を対象とした教育情報誌の記事などに表し、また、各地の英語教員研修会で指導法について具体的な提案を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究における3つの重点は、①大学生英語学習者のGWRにおける英語使用の実態分析、②技能を統合して行う英語指導のための教材開発、③技能を統合した指導のあり方の中高英語教員への提案であり、それぞれの達成度は以下の通りである。 ①大学の授業で実施したGWRの活動で、学習者30名に対して3回分の発話をICレコーダーに録音し、その後、発話の文字起こしを行った。これらを基礎資料として分析を行った結果、大学生のGWRを用いた一連の学習によって、学習者の発話の正確さが向上することが明らかになった。学習者は、GWRによる自律的な学びを通して、正確な英語を定着させることができた。しかし、学習者の発話を詳しく分析すると、自律的な学習活動のみでは改善されにくい言語材料が存在することも同時に明らかになった。②昨年収集した資料やBBCの語学学習サイトにおける素材などを活用し、大学生の学習用、ならびに、技能を統合して行う英語授業を教師が体験的に研修できるような英語教員ワークショップ用の教材開発を行い、大学の授業や教員研修会で活用した。。③「4技能を統合的に活用する英語授業のあり方」について大学の紀要や英語教員を対象とした英語教育情報誌に論文を掲載し、複数の技能を統合した指導のねらいや意義、さらに、具体的な授業のあり方を紹介した。また、鳥取、熊本、福岡、東京、愛知、岐阜等で英語教員研修セミナーを開催し、4技能を統合した指導について発表や提案を行った。参会者との議論を通して、複数の技能を統合して行う英語指導法の位置づけと意義の明確化を図り、具体的な指導のあり方を広めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
①大学生のGWRにおける学習行動の分析では、大学生の「口頭レポート」と「要約文」の内容や使用英語表現について、自律的な学習で改善される言語材料とそうでないものが存在することが明らかになった。つまり、何らかの指導により、学習者の意識を言語形式に向けさせることが必要であると考えられる。そこで、GWRの活動に、どのような形式指導を加えると学習者の英語の正確さが向上するのか検証を行う。また、学習者が英文から読み取った内容について、聞き手を意識して情報発信を行う活動を行う。学習者が情報の発信者となる場合、内容の読み取り、理解、リハーサルの過程での学習を振返り、学習行動とその内容を記録させ、その記録に基づいて、発信に至るまでの学習者の学習行動を分析する。 ②教材開発においては、中学生・高校生の発達段階や学習環境・条件に合った技能統合授業のモデルを構築し、中高教科書教材や副教材の題材を活かした教材開発、また、中高新学習指導要領に示される言語材料を意図的に扱った教材開発、さらには、英語圏における教材化可能な素材の収集により、中高英語学習に対応した教材開発を行う。 ③これらの教材や活動の工夫を提案し、中高協力校で継続的に授業実践を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費は、以下のような使用計画である。物品費250,000円、旅費433,715円、人件費35,000円、その他、50,000円。 物品費は、書籍の購入やデータの処理の効率化を行うためのソフトウエアーの購入費用として計上した。また、教材開発のための素材収集や先進的な実践の視察、学会発表等に必要な国内外への旅費(研究協力者分を含む)を計上した。さらに、セミナー開催の際の講師謝金等の人件費を計上した。
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