研究課題/領域番号 |
23652136
|
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
厨子 光政 静岡大学, 情報学部, 准教授 (90187823)
|
研究分担者 |
宮崎 佳典 静岡大学, 情報学部, 准教授 (00308701)
法月 健 静岡産業大学, 情報学部, 教授 (30249247)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | e-ラーニング / コンピュータ支援学習 |
研究概要 |
本研究の目的は、学習コンテンツ(英単語並べ替え問題)をe-learning用途にWebアプリケーションとして実装し、学習者が答えに到達する過程の分析を通して、自信をもって導いた解答と、不安を覚え戸惑いながら作り出した答えの違いを、マウスの動きから探ることができるようにすることである。CALLに代表される一般的e-learningシステムの履歴から閲覧できる学習時間や、正解率を分析するだけでなく、マウスの軌跡を再現し精査することによって、より正確に学習者の理解度を知ることができると考え、23年度には、マウスの軌跡情報閲覧機能を持つシステムを準備し、14人の被験者を対象に実験しデータを分析した。その結果、解答に要した時間、単語を並べ替える回数、マウスのUターン(後戻り)回数と、正解率との相関関係を導き出すことによって、学習者の理解度がある程度推測可能であることが明らかになった。さらに、このマウスの動作を数値的に分析することによって、結果的に答えが正しかったかどうかだけでなく、学習者の理解が不十分であるにもかかわらず偶然に正解にたどりついたことを示す「指標」を求められる可能性が見いだされた。採点方法においても、多くの学習システムが実装している○×式ではなく、部分点付与式採点方法を導入することで、より学習者の理解度に近づく工夫を試みた。これらの分析や考察は、国際会議や学会誌において発表され、一定の評価を得た。また、今後取り組むべき課題として、学習システムの改善、更なるデータ収集、学習コンテンツのジャンル別整理など、が明確になった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度は、Webアプリケーションとして実装した英語並べ替え問題に関して、1.解答時における学習者の反応を、マウスの軌跡情報の分析を通して探るシステムの整備、2.学習者の理解度をより正確に把握できる部分点付与方式の採点システムの構築、3.問題のジャンル別管理と、それに応じた検索・出題システムの構築が、本研究の目標であった。これらの目標は、それぞれのシステムの不備を補修し精度を高める必要があるものの、おおむね達成できた。1.マウスの軌跡情報については、解答時の動作を視覚的に再現し分析するシステムを準備し、それを使った実験で、学習者の戸惑いや不安(正解する自信がない、あるいは理解が不十分)が、マウスの静止、反復やUターン回数と関連づけられることが、ある程度明確になった。2.部分点式採点については、正解文の一部と同じ並びの語順が解答に含まれている場合に、その語句の重要度に合わせた部分点を付与する採点システムを実装した。これにより、○×式採点よりも、学習者の理解度がより正確に把握できるものと考えられるが、一方で、問題作成時の作業負担が増えるという否定的側面が現れた。3.問題のジャンルについては、準備した400題あまりの並べ替え問題を25の文法項目に分類し、さらに難易度も3段階に分けたが、これをシステムに組み込む作業がまだ残っている。以上のように、23年度の研究目標は、ほぼ達成できたと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
24年度は、1.23年度に構築したシステムの改良と更なる軌跡データの収集・分析と、2.準備したシステムの試用を通して、システムの有効性の検証、が研究の目標である。1.については、英語並べ替え問題提の作成段階で、複数解答が存在しないような設定、および正解に近い英単語の並びで問題が作成されないような設定を工夫した上で、更なる実験を重ね、マウスの動きと学習者の理解度の関係を追求する。その際、○×式採点と部分点付与式採点とのそれぞれの長所を比較し、部分点付与を行わなくても同程度に理解度を反映した評価方法があるのかなど、採点方法の側面からも学習者の理解度の判定の可能性を、マウスの動きと絡めて探る。2.については、本研究で開発した学習ソフトを一般の学生の自習教材として試用し、使い易さ、問題の難易度や採点システムによる評価の妥当性などを検証し、実用を視野に入れて、必要となる改良点を検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
24年度はデータの整理・分析、システムの改良と試用が研究の中心となるので、英語学習ソフトを管理するサーバや作成するパソコンが新たに必要となることはない。しかしながら、システム改良のためのプログラム開発専門図書、プログラミング環境(ソフトウェア)、計算機周辺機器などの費用、データ整理と入力の補助作業への謝金が必要となる。また、本研究に関連する、あるいは隣接する分野の研究会等への参加、発表などのために、国内外の旅費を必要とする。なお、23年度の助成金に少額の残高が発生したが、これは2月末決済時に、購入物品の一部を学内研究費で決済したためであり、この残高は24年度に繰り越すこととする。
|