2012年度は、それまでに実装したマウスの軌跡情報閲覧機能を持つシステムに改良を加えながら、更なる実験を行ってシステムの有効性を評価した。システムの主な改良点としては、1.学習者自身による自信度判定をパラメータに加える、2.英語並べ替え問題の解答欄を、問題提示ラインと分けること、の2点である。 1.学習者自身による自信度判定は、解答結果からだけでは判断しにくい解答中の迷いの有無に、より直接的に関連するパラメータとなり、正解率と自信度の双方が、単独では不十分な部分を補完し合いながら、迷いの程度を判定する指標となりうると予想した。また、2.解答欄と問題提示ラインを分けることによって、並べ替えるべき英単語を全て解答欄に移動しなければならないために、単語並べ替え回数がより正確に計測されることが期待された。問題提示ラインと解答ラインが同一線上にあると、すでに並べ変えた単語とこれから並べ替える単語が互いに隣接するために、「視覚的ノイズ」となり単語の並べ間違いを誘発する。これを避ける方法として解答欄を別に設けた。 これらのシステム改良の有効性を検証するために、2回の実験を行った。1回目は、1.の改良を加えたシステムを使い、学習者の「迷い」や「自信の不足」に関わるマウスの動き(解答時間、単語を並べ替える回数、マウスのUターン回数)と、得点や学習者の自信度との相関を計算した。2回目の実験では、2.の改良を加えて同様の相関を求めた。いずれの実験においても、それぞれの改良の有効性が確認され、学習者の迷いの判定にマウスの動きの分析が役立つことが示された。この結果を国内外の研究会で発表し、一定の評価を得た。今後は、迷いが解答中のどの部分で生じたかを探るために、マウス挙動の部分検索(問題を解く過程の一部分検索)が可能となるように改良を重ねる。
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