研究課題/領域番号 |
23652144
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
アレン・玉井 光江 青山学院大学, 文学部, 教授 (50188413)
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キーワード | 小学校英語 / Story-Based Curriculum / Storytelling / Joint Storytelling / 音声教育 |
研究概要 |
本研究は、学びを育てる英語教育プログラムとしてStory-Based Curriculumを開発し、その効果について量的、質的に研究することを目的としている。2012年度は次のような成果をあげた。まずは、昨年度行ったストーリーを中心としたカリキュラムを支える理論の検討に加え、今年度も引き続き当該カリキュラムがどのように小学生の英語力向上に貢献しているのかを検証した。また今年度もアメリカのストーリーテラーの研修に参加し、ストーリーを使用した教育の更なる可能性について学び、彼らと討議した。 実践面について言えば、昨年はGoldilocks and the Three Bearsを小学校教員とチーム・ティーチングで小学校5年生に指導したが、今年度は6年生を対象にJack and the Beanstalk、5年生には引き続き Goldilocks and the three bearsを実施した。また本研究に協力していただいている公立小学校ではこのカリキュラムが全ての学年で有効であるという思いから、第1学年から第6学年まで、全ての学年でストーリーを使用した英語教育が行われた。本研究者はその全ての教材作成を行い、小学校教員を指導した。研究代表者が関わっている5年生、6年生に関しては実施の前後にストーリーに出てくる語彙および表現に関するテストやアンケートを行い、その効果について検証した。昨年同様、児童の語彙能力は統計的にみて有意に伸びていた。また、文法的な気づきについても伸びていたことがわかった。 さらに英語を得意としない小学校教員がどのようにこのStory-Based Curriculumを受け入れ、取り組んでいったのかをインタビューとアンケートで質的にデータを収集した。教員の反応は大変良く、昨年同様、児童が自立・自律的に英語学習に取り組む姿に驚き、感動したとの意見が多かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究2年目の今年度は、研究代表者は引き続き6年生を指導し、昨年度とは異なるストーリーを開発した。一方、新しく5年生になった児童に対しては、研究代表者の指導を受けた学生が補助として関わり、学級担任とともにStory- Based Curriculumを実施した。昨年同様ジョイントストーリーテリングの導入直後と指導が終わった後にストーリーに何度か出てきた単語や表現について知識を測定した。6年生は、昨年とは異なる話(Jack and the Beanstalk)で、内容も難しくなったが、昨年度同様受容単語知識は統計的に見て有意に成長していた。また、今年度は産出能力を測るため、児童の発話を実験的に収集し、分析方法を探ったが、来年度にむけて改善する必要があることがわかった。またアンケートからはStory-Based Curriculumを通して、自律した学習者に成長する児童の姿を見ることができた。児童の反応からは「初めは難しくて到底覚えられそうになかったが、ジェスチャーと何度も言うことを通してわかるようになっていった」というものが多かった。児童は物語りを通して確実に英語を自分のものにしており、いわゆるlanguage ownershipを経験していることがよくわかった。 実験を進めている小学校では、教員の希望に従い、全学年でStory-Based Curriculumを展開し、1年生から6年生の全ての児童がお話を中心の授業を受けた。そのため研究代表者は全学年のお話教材を開発し、それを指導する担任教員に研修を行った。
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今後の研究の推進方策 |
この2年間で期待していた以上に研究、実践を進めることができた。これは小学校の担任教員が「意味のある文脈の中での英語教育」の重要性と効果を実感されたからだと考える。来年度も昨年度同様、研究代表者が6年生、研究代表者の指導を受けた大学院生が5年生を担当し、Story-Based Curriculumを実施し、更なるデータを収集していく。また、研究協力をいただいる小学校では引き続き1年生よりストーリーを中心にした授業を展開することにされており、1年生(ウサギとカメ、桃太郎)、2年生(ありときりぎりす、The Gingerbread Man)、3年生(7匹の子ヤギ)、4年生(おおきなかぶ)、5年生(Goldilocks and the Three Bears)、6年生(Little Red Riding Hood)に取り組む予定になっている。 6年生のクラスでは、引き続きストーリーを通して受容単語がどのように伸びるのか、また産出能力はどのように変化するのかを測定する予定である。昨年は8名と少人数のデータ収集だったので、今年度は6年生全員の音声を収集する予定にしている。インタビューおよび能力測定については参加者の人権を守ることを明らかに文書で表し、参加への同意を得る。児童はStory-Based Curriculum を通して多量のcomprehensible inputを得ることができるので、曖昧性に耐える力を伸ばしていることがわかったが、今年度はこのカリキュラムの効果を挙げている1要因であるジェスチャーの効用性についても調べてみたい。 今年度も引き続きStory-Based Curriculumを体験している小学校教員にもアンケートを行い、この教授法についての反応を探る予定である。また中学校に進学した卒業生の追跡調査を考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度同様、アメリカのストーリーテリング協会への視察、およびワークショップを受ける計画である。また、研究1年目に招聘したアメリカのストーリーテラーを再び日本へ招待し、講演またはワークショップを開催する予定である。ワークショップを通して英語教育におけるstorytellingの重要性とまたJoint-Storytellingの有効性について伝えることが目的である。 また3年間の研究結果を国内外の学会、また研修会などでも積極的に発表し、ストーリーを中心にした英語教育の可能性について広めていきたい。 その他、教材開発のため必要な物語に関する書籍、イラストなどを購入し、データ収集および入力に対して謝金を支払う予定である。
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