研究課題/領域番号 |
23652146
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
谷 みゆき 中央大学, 法学部, 准教授 (50440201)
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研究分担者 |
青木 敦子 聖心女子大学, 文学部, その他 (70440203)
阿久津 純恵 桜美林大学, 公私立大学の部局等, 講師 (20460024)
多々良 直弘 桜美林大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (80383529)
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キーワード | 英語教育 / 事態把握 / ライティング / 学習者コーパス / 言語学 |
研究概要 |
平成24年度科学研究費実施状況報告書提出の際、平成25年度の研究推進方策として、①事態把握に関するさらなる考察、②データ収集および分析、③教育手法・教材開発、④研究成果報告の4点を挙げていた。しかしながら、研究代表者が産前・産後休暇および育児休暇(平成25年7月15日~平成26年1月31日)を取得したため、当初の計画通りの研究遂行が困難となり、最終的には③を除く、①、②、④の実施にとどまった。 具体的には、①事態把握に関するさらなる考察として、日英語話者の移動表現に見られる事態把握の傾向性について、両言語によるサッカーの実況中継の中での表現と視点について考察を進め、論文にまとめた(多々良直弘(2014)「好まれる事態把握と移動表現―実況中継における移動表現と視点に関する一考察―」『桜美林論考 言語文化研究』第5号、pp. 21-35、桜美林大学)。また、②データ収集および分析として、平成23年度から25年度にかけて収集した学生のライティング課題で学習者コーパスを作成し、日本語を母語とする英語学習者が頼りがちな英語表現の傾向を分析するとともに、本研究課題の中で「英語らしい」英文を書くための教材作成を進めて行くにあたっての今後の課題を明らかにした(阿久津純恵・青木敦子(2014)「日本語を母語とする大学生英語学習者の英語ライティングにみられる傾向の分析―語彙と共起表現に関する一考察」『桜美林論考 言語文化研究』第5号、pp. 37-49、桜美林大学)。 計画を変更しての研究実施ではあったが、日英語話者の事態把握の傾向性という、本研究課題の理論的基盤についての考察を進めつつ、実際に収集したデータについてコーパスを作成しながら分析を行ったことは研究全体において非常に重要性の高いプロセスであり、また特にデータ分析によって今年度の課題が明らかになった点は大変意義のあるものとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度は、研究代表者の産前・産後休暇および育児休暇(平成25年7月15日~平成26年1月31日)取得により、当初の研究計画を変更しての研究推進となった。特に当初実施予定であった「英語らしい」英文を書くための教育手法の発案および教材の開発について、平成26年度に持ち越すことになったが、これは本研究課題の根幹をなす部分であり研究代表者を欠いての遂行は望ましくないと判断しての決断である。よって結果的に日英語話者による事態把握の傾向性に関するさらなる考察と、平成23年度から25年度までに収集したライティング課題データを学習者コーパス化し分析するにとどまり、達成度についての自己判断は「やや遅れている」とした。 しかしながら、本研究の理論的基盤である事態把握の傾向性に関する考察をさらに進めたことで、「英語らしい」英文と日本語を母語とする英語学習者による英文との乖離が事態把握に起因するという前提がさらに強化された。また、学習者コーパスを作成したことでデータ分析の道具立てが整備され、データのコーパス化と分析の経験を通じて、今後のさらなるデータ収集および教育手法・教材開発に関する課題が明らかになった。従って今回の研究計画変更による研究成果向上が見込まれることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
補助事業期間最終年度となる平成26年度は、本研究課題の最終的な目的である「『英語らしい』英文を書く力を身につけるための教育方法および教育教材の開発」に重点を置いての研究推進となる。 具体的には、さらに学習者コーパスを充実させるべくデータ収集を進めながら、前期は平成25年度のデータ分析で見えた英語学習者の傾向に従って作成した教材をライティングクラス内で実際に使用することによって、学習者による英文に変化が見られるかを観察する。観察にあたってはインタビューも実施し、英文を書く際の心理的作用についても分析を行う予定である。データ分析においては複数の統計処理ソフトウェア・質的分析ソフトウェアを導入する。また、英語ネイティブスピーカーの教員に対するインタビュー等を実施し、英語話者はどのような英文を「英語らしい」英文ではないと判断するのかに関する知見を収集し、その結果を今後のデータ分析における指針の1つに加える。後期は前期中に学習者の英文に変化が見られた場合は、引き続き同じ手法を用いてさらなる経過を見る。変化が見られない場合はデータ分析をさらに進め、教材に改良を加えた上で改めてクラス内で使用する。 教材使用およびその成果については学会発表および論文にて発表の予定である。また、本研究課題における研究過程および成果を報告書にまとめ、印刷を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者の産前・産後休暇および育児休暇取得のため、平成25年度に実施予定であった「英語らしい」英文を書くための教育手法の発案および教材の開発を平成26年度に持ち越したため、次年度使用額が生じた。具体的には、英語学習者を対象としたライティング課題における心理的作用に関するインタビュー、英語ネイティブスピーカーを対象とした「英語らしい」英文についてのインタビュー、教材作成および学習成果分析のためのソフトウェア購入、学会発表に関わる旅費等経費である。また、本研究課題を通しての研究成果報告印刷代についても最終年度となる次年度に支出することとなった。 英語学習者ならびにネイティブスピーカーへのインタビュー謝礼として25万円、データ分析ソフトウェア代として15万円、学会発表旅費として20万円、報告書印刷代として10万円(いずれも概算)の支出を予定している。
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