平成25年度は主に本研究の総括に力点を置いた。日本人英語の特徴の分析に関しては、平成24年度に実施したアジア13か国の学習者コーパスであるICNALEを用いた英語エッセイの分析により、日本人英語に特有の高頻度語連鎖があること、それらが英語学習の習熟度にさほど影響を受けないことが確認された。また、インド英語と日本人英語との比較等を通して、アウターサークル英語とエクスパンディングサークル英語に共通特徴がみられ、English as a Lingua Francaのcore になりうる特徴として、今後の日本人英語の中核用法となりうる可能性を確認した。加えて、The Mouton World Atlas of Variation in English (2012)を基本資料とし、多様なアウターサークル諸英語と日本人英語との共通特徴の抽出を試みた。 また、日英語の文法特徴を文化の視点から比較して日本語が日本人英語に及ぼす影響の分析を行ない、「モダリティ表現の多用、主題化の多用、原因結果表現の回避、論理のあいまいさ、yes/no表現のゆらぎ」等が日本人英語のイノベーションに繋がり得る可能性を確認した。 日本人英語のイノベーションへの肯定的認識が英語学習者の国際発信力の強化に繋がることの確認が本研究のねらいの一つであったが、アジアの学習者や日本人学習者を対象とする調査では、本研究の分類による「学習段階」に属する英語使用者と「習熟段階」に属する英語使用者で非母語話者英語の受け止め方に相違が見られ、「国際英語論の指導において、学習者の習熟段階に応じた指導の工夫が求められる」ことが判明した。研究成果は、English Scholars Beyond Borders国際会議(2014)において発表を行ったほか『現代社会と英語―英語の多様性を見つめて』(金星堂:2014)に発表した。
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