研究課題/領域番号 |
23652152
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
田口 正樹 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (20206931)
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キーワード | 岡松参太郎 / 台湾 / 旧慣 / 慣習法 / 立法 / ドイツ / 民法 / 植民地 |
研究概要 |
本年度は研究2年目であるが、まず前年度に着手した岡松参太郎のヨーロッパ留学に関する研究ノートを完成させ、「岡松参太郎文書」中の資料に依りつつ、ベルリンおよびハレにおける聴講状況、購入書籍、学会加入などから岡松とドイツ法学との接点を確認した。 次に、ドイツ近代私法学の慣習法論について、19世紀の学者たちの著作と近時の二次文献を調査し、中でもサヴィニーおよびプフタの議論をベースとしつつ展開した後期パンデクテン法学(デルンブルクなど)の見解を重点的に検討した。その際、岡松の台湾における活動との関係で、慣習を認識し法学的形象へと精錬するにあたっての法学者の意義をどう考えるかという点、および慣習と立法との関係をどのように構想するかという点にとりわけ注意を払った。更に19世紀末から20世紀初めにおけるドイツの植民地政策(アフリカ各地・太平洋・極東)とその中で法が占める位置についても、基本的文献を収集し、調査と検討を開始した。植民地法政策との関連でコーラーら比較法学者が作成したアンケートとその実際の運用についても、文献収集と考察を行った。 これらの研究の過程で、ルツェルンで開かれたドイツ法制史学会に参加して、ペーター・エストマン教授(ミュンスター大学)らと意見交換を行うとともに、バイロイト大学のディートヘルム・クリッペル教授およびベルント・カノフスキ教授のゼミナールで研究関心を紹介する機会を持った。 最後に、岡松の旧慣調査・立法活動の意義を測定する前提として、清朝時代および日本統治期の台湾の社会構造についても、関連研究を収集し検討をすすめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
岡松参太郎のヨーロッパ留学について、未公刊資料に依りつつ基本的事実を解明する研究ノートを完成させた他、ドイツ近代法学とりわけ後期パンデクテン法学の慣習論の基本的論点を確認し、岡松の台湾での旧慣調査・立法活動を評価するための基礎を固めた。また、ドイツの植民地政策とそこにおける法と法学者の役割に関しても検討を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
清朝時代および日本統治期の台湾の社会構造、とりわけ土地をめぐる関係について、関連する先行研究などによりながら、基本的な問題状況を確認する。岡松の台湾における活動の意味を理解するためには、このことが、必要な前提作業であると思われる。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記のような、社会構造についての確認作業の必要性が明らかになってきたため、準備作業を十分に行ってより実りある意見交換を行うべく、今年度中に予定していた台湾における中間報告を次年度に延期したため予算に残りが生じた。次年度には、この台湾出張を行ってこの分を海外旅費として使用する他、ドイツでの最後の資料収集と分析のための海外旅費、更に関係文献の補足的収集などに使用する。
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