民法学者岡松参太郎(1871-1921)は、1896-1899年のヨーロッパ留学中にとりわけドイツの大学(ベルリンおよびハレ)で勉学したが、特定の学説や分野に限定されず、19世紀ドイツ法学の一般的性格を深く理解する機会を持った。彼が主導した台湾旧慣調査は、台湾の旧慣をドイツ法学の概念で記述するものであったが、その基礎には、中国法系を軽視しローマ法系を高く評価する近代日本の法系論、人民の代表としての法学者が法形成を担うという19世紀ドイツ歴史法学の基本姿勢、国家法を中心とする非西洋的法観念が存在しており、全体として複合的な性格を示したのであった。
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