研究課題/領域番号 |
23652158
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
今津 勝紀 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (20269971)
|
キーワード | 家族 / シミュレーション / 婚姻 / ライフサイクル |
研究概要 |
本年度は、人口の時系列変化を観察するプログラムを作成してシミュレーションを実施した。まず、前年度来の半布里戸籍でえられた人口構成を定点とし、その人口構成を維持する場合の出生率、死亡率を措定し、本年度は、シミュレーションの中間に生成される死亡データ・婚姻データ・出生データを採取して、それを集計することで、設定した個人のライフサイクルを復元した。婚姻を通じた連鎖の具体的な在り方を探るのが目的で、この点で一定の見通しをえることができた。古代戸籍にみえる寄口については、女系親族であるかなどが争われてきたが、寄口が出現するプロセスを具体的に復原したことに成功していると考えられる。寄口はこうした婚姻の連鎖により、戸主との繋がりが不明確になったものと推測される。次年度は。シミュレーションに際して与える閾値を変更し、より実態に近いシミュレーションに仕上げることが課題である。本年度は、研究成果を「日本古代的家族与村落」(『“日本古代史研究的現在与未来”国際学術検討会論文集』北京大学・精華大学・京都大学 2012.10)、「古代家族の復原シミュレーションに関する覚書」(人間文化研究機構連携研究『正倉院文書の高度情報化研究 シンポジウム 予稿集』国立歴史民俗博物館、2013.1)などで発表し、「古代家族史論争」(歴史科学協議会編『戦後歴史学辞典』東京堂出版、2012.7)、『日本古代の税制と社会』塙書房、2012.7(単著)に成果が反映されている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の核心はシミュレーションプログラムの開発であり、一応の完成度を満たしたものとなっており、シミュレーションにより復原研究が可能となっている。また、研究成果の発表も順調に行われており、以上のように判断される。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、人口の時系列変化を観察するプログラムを仕上げ、閾値を変化させることで、より実態に即したものとしたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
人口変動と集落動態の相関を調べるため、集落遺跡の確認などを行いたい。また朝鮮半島や中国大陸での古代家族の在り方と比較検討するために、関連資料の収集と検討を行うつもりである。当初は欧州での社会史学会での報告を考えていたが、アジア諸国でもこうした研究方法に関心が寄せられており、前年度に引き続き、中国での報告を模索する予定である。
|