本研究では、大宝二年御野国加毛郡半布里戸籍を定点として、古代の出生時平均余命や死亡率・出生率などを具体的に数値として示し、こうした基礎的条件の下で、婚姻・死別・再婚がどのように発生するのか、血縁関係の連鎖がどのように変化するのかシミュレーションを行った。古代の「家族構成」の流動性をトレースすることで、戸主との繋がりの不明確な戸口が発生するプロセスを具体的に示すとともに、婚姻構造の男女対称性の揺らぎが、婚姻を通じた血縁関係の連鎖にどのように作用するのかを明らかにした。古代の家族については、核の部分の父系による婚姻連鎖と周辺部分の双系制的連鎖の二重構造モデルが有効であることを示した。
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