平安時代銭貨の小型化・粗悪化の原因を料銅不足とする通説は説得力に欠ける。本研究は鋳造実験を通して関係史料を見直し、平安時代貨幣制度崩壊の原因を考究した。その成果は次の三点である。 すなわち、①平安時代最初の銭貨隆平永寳に関する『日本後紀』の欠字部分の推定を行い、『出土銭貨』33号に奈良朝銭貨から隆平永寳への転換に対する新見解を発表し、②工房和銅寛での鋳造実験で、銭貨粗悪化と料銅不足および小型化との関係が直接的ではない事を確かめ、内容の一部を続日本紀研究会記念論文集に投稿し、③平安時代銭貨の料材に古和同も含まれるとの説に対し、金属組成・同位体比の点から成立しないことを発刊予定の著書に組込んだ。
|