研究課題/領域番号 |
23652168
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
HAYASHI Brian 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (30314165)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 黄禍論 / 米軍陸軍 |
研究概要 |
初年度の研究目的は、1900~1940年代、米国陸軍内の重要人物がいかにして「黄禍論」を受容し、また否定したのか理解することである。まず、帝国日本軍がカリフォルニア州を侵略すると主張した黄禍論者Kilsoo Haanに焦点を当てる。軍事情報部に注目し、米国陸軍関係者がHaanの主張をどのように受け止めたのか分析する。石油王Edwin Pauleyら軍需産業を支配していた民間人にも焦点を当てて、米国陸軍内において「黄禍論」がいかに理解されたのか検討する。 初年度の研究内容: 本研究はスタンフォード大学所蔵Stanley Hornbeck文書を分析し、Haanがいかに「黄禍論」に傾倒したのか理解する。すでに申請者はUS Army Heritage & Education Centerでの調査等を通して、Nelson MilesやJohn DeWittら陸軍関係者が「黄禍論」をいかに理解また利用していたのか把握している。くわえて、軍需産業における民間人がいかにして黄禍論を利用し、戦後に放棄したのか理解するため、UCLA所蔵Edwin Pauley文書も分析している。こうした研究結果は、申請者が2012年夏のAmerican Historical Association(アメリカ歴史学会)において、発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2011年度の目的は、1900~1940年代、米国陸軍内の重要人物がいかにして「黄禍論」を受容し、また否定したのかを判明することであった。その具体的な研究方法は、まず、帝国日本軍がカリフォルニア州を侵略すると主張した黄禍論者Kilsoo Haanの関連資料を米国を中心に収集し、米軍情報部の米国関係者がいかにHaanの主張を受け止めたのか、を考察した。次に、軍需産業を支配していた石油王Edwin Pauleyらの民間人にも焦点を当てて、米国陸軍内部において「黄禍論」がいかに理解されたのか、を検証した。 こうして資料収集と資料分析は交付申請書に書かれた計画の通りに、完成した。2011年度の研究成果を2012年8月に開催されるアメリカ歴史学会(San Deigo, California)に発表し、その後、発表内容を修正し、アメリカ歴史学会によって刊行される予定の論文集に集約される。
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今後の研究の推進方策 |
2012年度、申請者は米国海軍関係者が「黄禍論」をいかに受け止めていたのか、を明らかにしようとする。米国海軍の日本人観に影響を与えた人物に焦点を当てる。1940年代までの間、海軍内で「黄禍論」が拡大するとともに、それが日系アメリカ人の海軍従事の拒否、一転して諜報組織での採用にどのような影響を与えたか分析する。海軍が「黄禍論」を日本の戦力を理解するためではなく、十分な軍事予算を獲得するためのレトリックとして利用した点を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
2012年度、上記の研究目的を達成するために、米国を中心に資料収集を行う予定である。その詳細は、米軍海軍の政策に大きな影響を与えた3人の中心人物(Richmond Hobson、Chester Nimitz、Ellis Zacharias)を米国国立公文書館等の資料を用いて検証する。 (1) Richmond Hobsonが帝国日本の戦力を米国への脅威として認識していた背景を探る。(2) Chester Nimitzが「黄禍論」を帝国日本の脅威を理解する概念として利用していた点、そして、Ellis Zachariasが1930年代まで「黄禍論」を強く支持していなかった点についても明らかにする。さらに、改めてHaanに焦点をあて、ロサンゼルスのSalvation Armyの資料から、彼の宗教的背景と「黄禍論」の主張の関係性を理解する。
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