研究課題/領域番号 |
23652170
|
研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
渡邊 昭子 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (20293144)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | ハンガリー / 近代 / 婚姻 |
研究概要 |
ハンガリー国立図書館等において研究文献を調査して研究史を整理し、研究動向を検討した。 研究動向は次の通りである。ハンガリーでは1890年代の民事婚法成立の前後に、異宗派婚の歴史に関する研究がまとまって現れた。この時期のものは、おもに法制度の歴史を追ったものが中心である。法政度史を中心とした研究は、民事婚制度推進の側についても、カトリック教会を中心とする民事婚制度反対派の側についても同様である。政策に関しては、19世紀後半に国教関係制定に向けて活動した政治家について、20世紀後半の社会主義期にチズマディアが明らかにしている。異宗派間で結婚した人びとに関しては、戦間期のセールが長期的傾向を分析したものが先駆といえる。この点では社会主義期にほとんど研究が見られなかったが、1990年代以降、新たな研究が現れていることがわかった。ファルカシュは、19世紀前半のカトリックとプロテスタント間の婚姻について、法制度改革のための議論や、実際に結婚しようとした者たちが抱えた問題等を明らかにしている。カラーディはおもに20世紀前半におけるユダヤ教徒にとっての異宗派婚を、社会的流動性という視点から検討している。ヴェルケルはブダペシュトのカルヴァン派教会の簿冊を基に、個別事例を取りあげて改宗と異宗派婚の関係を検討した。さらに、トートは宗派集団を歴史的に形成された身分制社会内部の境界の一つと見なして論じている。このように、近年では法制度だけでなく、個々人の判断をめぐるようなミクロな視点や、社会制度としての結婚という視点からの研究が現れていることが明らかになった。 以上に加えて、上記の研究を参照しつつ、法令集を基にして、ハンガリーにおける異宗派婚に関する法律の変遷をまとめた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的のうち、初年度に計画した2点、すなわち (1)研究史の整理、(2)制度史の解明はおおむね達成することができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度以降は、おもに文書館調査を行なう予定である。まず、カトリックとカルヴァン派の教会文書館において文書を調査する。両文書館ではそれぞれの宗派における婚姻規定の変遷を調べて明らかにし、さらに、異宗派婚に関する法律が教会内でどのように議論され、また、訴訟の際に両宗派がどう対応して結論を出したのかを個別の事例を取りあげながら検討する。以上の作業により、両宗派の婚姻制度の変遷を明らかにする。 次に、事例研究に適した地域を選び、その地域の県文書館で史料を調査する。おもに婚姻関係の裁判文書や学校関係文書を閲覧し、異宗派婚が問題となった事例を収集する。裁判史料ではとくに離婚時の訴訟の文書を中心に調査し、学校関係の史料では、異宗派間の婚姻から生まれた子供の教育をめぐる問題を取り上げた文書を中心に調査し、各事例における論点を整理する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
ハンガリーへの渡航費および滞在費70万円、史料文献等複写碑15万円、文献購入費15万円。
|