インドにおける植民都市社会を研究するため、史料の基盤研究、都市形成過程の諸実態、東インド会社期から帝国期に至る史料の接続の問題を、マルチアーキヴァルな調査から得られる多面的な検討を企図して、H23、24年度に海外調査・巡検を重ねた。この結果得られた実証的な成果は、各年度の研究会で共有され、研究分担者、研究協力者のH23、H24、H25年度の主たる研究成果として反映されている。 さらに、当該研究課題の大きな成果となる、インド植民都市社会史についての共同研究関係者3名のモノグラフが、論文集2冊にそれぞれ収録される予定で、編集作業に入っている(各書2015年に出版予定)。 具体的には、第一にインド植民都市の女性についての社会史的実証研究である。世界史にみる女性の問題は近年のグローバルな歴史叙述への要求に不可欠なテーマとなっている。本研究課題はこの要請に社会史研究の立場から応えるもので、なおかつイとギリス東インド会社期と帝国期の諸都市、ムガール支配のインド都市、オランダ東インド会社の植民都市を比較するための複数の論文を上記の2冊の論集に寄稿することができる。 第二は、史料研究としての検討基盤の構築である。本研究課題の実施にあたり、イギリス東インド会社史料、オランダ東インド会社史料、ムガール史料、イギリス帝国史史料を突き合わせて検討することが可能となった。ここで、特に、イギリス東インド会社史料と継続する時期のイギリス帝国史史料の接続の問題を史料論として研究することが、インド植民都市社会史を考察する上で大変重要な点となることが明らかになった。会社史料から抽出する社会史史料と、帝国期の膨大な社会史史料、この性格の異なる二つの史料群を都市社会形成過程の歴史構築に有効に研究利用するための基礎的史料研究として、平成26年度から同じ共同研究チームで科研費基盤Cの採択課題に引き続き着手する。
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