研究課題/領域番号 |
23652173
|
研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
田中 きく代 関西学院大学, 文学部, 教授 (80207084)
|
キーワード | 大西洋史 / 1848年革命 / 亡命者 / ツルネルン運動 / アメリカ合衆国 / ドイツ / リテラシー / フリーソイル運動 |
研究概要 |
2012年8月から9月にかけて、前年度に引き続き、アメリカ合衆国のウィスコンシン州とマサチューセッツ州で、1848年のドイツからの亡命者について史料調査をした。マサチューセッツ州では、アメリカに亡命時のフォーティ・エイターズの史料や自由土地党(フリーソイラー)の史料を調べた。続いて、ウィスコンシン州では、ウィスコンシン州歴史協会で史料調査をした。また、これらの調査を通して、1848年にドイツで体制批判派が重視していた体操運動であるツルネルン運動が、亡命者や移民を通してアメリカ合衆国に持ち込まれていたこと、そのツルネルンのクラブがアメリカでの社交あるいは政治運動の基盤となっていたことを理解した。1850年代にはアメリカ全土にツルネルン・クラブが広がっていたことは、昨年度発見した事実であるが、本年度はこれをかなり具体化し、ドイツ系移民がフリーソイル運動に与えた影響について手ごたえをえた。これは得難い成果であったといえる。 海外調査以外では、「1848年革命とフォーティ・エイターズのかかわりについて」に関して、多くの研究会などで報告したが、本年度は全体を整理するのに時間を要した。アウトプットは来年度になるが、その前提となる研究は、一部次年度に海外調査をせざるを得ない点は残るものの、ほぼ完成したといえる。また、Mischa Honeck, We are the Revolutionalists: German-Speaking Immigrants and American Abolitionists after 1848(University of Georgia Press, 2011)の翻訳を始めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実績の概要で述べたように、海外調査は、亡命者の社交クラブツルネルンの実態の調査にかなり進みえた。こうした亡命者のデータと、当時の政治、経済、社会、文化的状況とつなぎ合わせる研究も、かなりの程度まで進んだといえる。本年度は、論文などの形で発表できなかったことは、予定通りではないが、ほとんど最初に想定した史料調査、o及びその整理はできたといえるので、おおむね順調に進展したといえる。アウトプットとしては、来年度に論文2本、関連の書物の翻訳1本を予定しているが、その準備ができたといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度も夏期に、ウィスコンシン州で調査をする。また、フォーティ・エイターズのドイツからの亡命経路を明確にするための史料調査を、昨年度に引き続きニューヨーク、ボストンなど東海岸の亡命者受け入れ地で行う予定である。また、3月に移出先のベルリン、ハンブルグにも行く予定である。そのほかに、平成25年度は、紀要、報告書、翻訳の形で、研究を刊行する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
2週間はウィスコンシン州で調査をし、あとの1週間はニューヨーク市で、もう1週間はボストン市で、それぞれ史料調査をするので、こうした海外調査の支出の一部にあてる予定である。残りは、書籍の購入などに充てる。前年度に旅費、謝金などの節約で発生した繰越金(182,757円)は、本年度のドイツへの渡航費の一部に充てる。
|