研究課題/領域番号 |
23652175
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
新里 貴之 鹿児島大学, 埋蔵文化財調査センター, 助教 (40325759)
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キーワード | 南西諸島 / 洞穴 / グスク時代(中世) / 貝塚時代 / 考古学 / 動物考古学 / 人類学 / 祭祀 |
研究概要 |
本年度は、昨年度に引き続き、鳳雛洞遺跡を主体として、大山水鏡洞と二箇所の入洞調査を実施した。 鳳雛洞遺跡では、洞穴内の光波測量器による測量調査を主眼とし、水路やテラスなども洞穴内部の複雑な地形測量、遺物の出土地点・状況の測量・実測を行った。テラスでは一部試掘調査を行い、土器の確認されたテラスに必ず炉があることが判明した(昨年度はないと判断していた)。炉には分割された土器の一部が埋没しており、これが置かれたように露出した土器と接合したことから、意図的な分割行為であると判断した。分析結果、土器は1/2に分割したのち、1/2分を利用する行為であり、さらに分割して1/4を置き、残り1/4は割って炉上に据え置くという過程が復元できた。水路は試掘し、海産貝類の出土確認を行ったが、やはり前回と同様に海産貝類は得られなかった。水路で得られたいくつかのウシ骨は年代測定を行い、これらがグスク時代(中世)に所属し、そのうちの1点は、土器と同様に11世紀後半~12世紀であることが判明した。以上の状況から、最終的には祭祀遺構の可能性も含めて検討することを考慮している。なお、鳳雛洞遺跡の成果については、南九州・奄美地域の新聞で紙上発表を行った。 大山水鏡洞では、当時カタツムリが落ち込んだと考えられる閉塞した竪坑と貝塚時代人骨(約4200年前)ケイブマン(仮称)の死亡していた位置の距離の簡易測量、洞穴内部における広範囲の写真撮影等を行った。また、ホール内に多量に残っている死滅したカタツムリの放射性炭素年代測定を実施したところ、約7600~2800年前の年代が出ており、少なくともこの時期には竪坑が開口していた可能性が考えられた。しかし、ケイブマンがこの竪坑から落ち込んだのかを判断することは未だできていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査(発掘・測量)は順調に進行しており、遺物の実測を残すのみである。人工遺物の分析、貝類遺体の分析、脊椎動物遺体の分析、これらの放射性炭素年代測定はほぼ完了しており、人骨の形質、ミトコンドリアDNA、食性、放射性炭素年代測定が進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
人骨については各専門の研究者に措置してもらう。日本考古学協会、鹿児島県考古学会、日本人類学会、日本洞窟学会における口頭・紙上発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、各種学会発表における旅費、報告書作成費、放射性炭素年代測定に使用する予定である。
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