研究課題/領域番号 |
23652177
|
研究機関 | 千葉県立中央博物館 |
研究代表者 |
黒住 耐二 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員 (80250140)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 真珠 / アコヤガイ / 貝塚 / 広西チワン族自治区 / 貝類遺体 |
研究概要 |
今年度は、海外調査として中国南西部/広西チワン族自治区の合浦周辺と、国内各地で現地調査を行った。これまでほとんど詳細な記述のなかった広西の珍珠城遺跡において、真珠貝遺体を発見することができた。この遺跡は、ほぼ真珠貝のみの廃棄場所と考えられ、他の食用貝類遺体は極めて稀であった。真珠貝は、日本に多いアコヤガイとは別種であり、現在、詳細な分類学的な検討を行っているが、モスソアコヤの可能性が高い。また、発掘調査を行わなかったので、本遺跡貝層の年代は不明であるが、僅かに確認された陶磁器は清代のものであった。真珠貝は極めて稀であったが、珍珠城遺跡に近い位置に存在した西窟遺跡の踏査でも、僅かであったが、真珠貝が得られた。本遺跡の陶磁器は清代のものであった。その他の遺跡発見のために、可能な限り海岸部を踏査したが、遺跡の確認には至らなかった。珍珠城・西窟両遺跡周辺のトンキン湾北岸部では、真珠貝が海岸に打上げられておらず、また潮間帯でその生息は確認できなかった。ただ、水深5-10m程度の砂泥底での漁獲物に比較的多くの真珠貝(遺跡出土と同種)が混入しており、本地域の真珠貝は潮下帯の砂泥底に生息していることが確認できた。この生息場所は、博物館の展示で示されていた真珠貝の潜水漁と合致するものであった。また、湾内のウエズ島でも調査を行ったが、岩礁域が発達しながら、真珠貝類は全く確認できず、海岸部に真珠貝を含む人為的貝層も発見できなかった。このことも、本地域の真珠貝採集は、この島にまで及んでいないと判断された。国内では、鳥取の弥生時代の青谷上寺地遺跡の貝類遺体を検討することができ、真珠貝ではないが、真珠層の発達するイガイのまとまった廃棄が認められ、必ずしも食用だけでなく、真珠採集の可能性も否定できなと考えられた。沖縄の古代併行期のナガラ原東遺跡でも小形の真珠貝類がまとまって出土していることを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本ではほとんど知られていなかった広西チワン族自治区の珍珠城遺跡や周辺の遺跡を、実際に確認できたことは大きな成果であり、研究が順調に進展している例である。また、弥生時代にイガイを真珠目的で採集していた可能性を指摘できた点も、これまで全く知られておらず、新たな研究視点を明示できた。
|
今後の研究の推進方策 |
僅かな情報しかなかった広西チワン族自治区を実際に訪れることにより、遺跡を確認でき、次年度のスリランカのマンナール湾でも、同様な現地踏査の重要性が確認でき、この方法で研究を推進したいと考えている。国内でも、同様に、現地および様々な時代の遺跡の出土貝類を検討する方向で進めていく予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、スリカンカのマンナール湾・日本国内の志摩地方・大村湾の現地調査を実施するために、旅費を全体の約半分用い、それぞれの地域からのサンプル送料も5万円程度予定している。また、得られたサンプルの年代測定に30万円程度使用する。その他、各地方の文献購入に残りの額を充てる予定である。
|