研究課題/領域番号 |
23652180
|
研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
月原 敏博 福井大学, 教育地域科学部, 教授 (10254377)
|
研究分担者 |
門井 直哉 福井大学, 教育地域科学部, 准教授 (20324139)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 3次元計測 / 地理情報システム / 地図 / 空中写真 / アーカイブ |
研究概要 |
初年度である平成23年度は,1)アーカイブの仕様・精度基準と作業手順の確立,2)ハード+ソフトウェア環境の基本的構成の構築,3)地図・空中写真の電子化作業,4)3次元モデル化及び精度検定のための野外GPS測量,の4点大別できる研究作業を計画したが,いずれにおいてもほぼ順調に進捗した。 1)については,とくに基礎資料の電子データ化と成果品である作成後のデータの精度基準について手順・仕様を作業規程のかたちで明確化し,2)については予定通り米アラスカDAT/EM社製Summit Evolutionと汎用CADのAutoCADを結合させたシステムの基本構成を構築した。3)については学生アルバイト(謝金)の力を継続的に得ることができ,自研究室及び学内に所蔵する空中写真と地図の電子化作業を行なったが,電子化しえた地図・写真の枚数はそれぞれ約3600枚・1300枚に達し,当初の計画以上のペースで基礎資料の電子化作業を行えた。4)については数十枚から数百枚に及ぶ空中写真に対しての空中三角測量,及びオルソ化の作業を試行して3次元モデル化の作業手順とその精度を確認した。また野外GPS測量による空中写真標定のための基準点位置情報の取得方法についても実地にその手順の確認作業を行ったが,土地家屋調査での応用を視野に旧写真を現在の位置情報をもとに3次元モデル化した際の成果品の精度を検定する実験については,検証点の位置精度を別の方法でより高精度に得ておく別種の計測が必要となったことから,精度検定自体の本試験の実施は次年度(24年度)に行なうこととした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の内容は,上の概要に記したしたとおりであり,土地家屋調査での応用を視野に入れる際に必要となる旧写真から作成する3次元成果品の精度検定の本試験については次年度に行うこととなったが,初年度においては当初の計画以上に進展できたことに次の2点があった。このことを踏まえて全体として「おおむね順調に進展している」と評価できる。 1)構築中の地図画像アーカイブを現実の社会で最も有効に活用できるのは,土地の境界画定や地籍図の整備など,土地家屋調査にかかわる分野であるが,『公図と14条地図にかんする研究会』(於 福井大学)を2度にわたって開催(主催)し,福井県土地家屋調査士会の主要メンバー,とくにその公図研究会の方々,そして,土地家屋調査士会の全国組織である日本土地家屋調査士会連合会の方々(理事,研究所長を含む),また関連テーマについて数冊の専門書を出版された香川県土地家屋調査士会の方の参加を得て,土地家屋調査の実務への活用法や地籍学確立へ向けての意見交換を行なえたこと。 2)コアとなるソフトウェア,米アラスカDAT/EM社製Summit Evolutionは,衛星画像も3次元モデル化可能であるが,衛星画像向けの標定法については未完成部分を残している。この標定法開発について学内(工学部)の教員と協同してその検討に着手し,新たにJAXAへの研究協力依頼を行うほか特許申請も行う準備が整うに至ったこと。
|
今後の研究の推進方策 |
構築中の地図・画像アーカイブは,福井県地域を対象として,都市計画図などの大縮尺地図,及びその作成に使用された空中写真という既存の地図・画像情報を電子化し,統一的な座標系のもとで高精度の3次元再計測や新図面作成が可能なシステムである。このシステムは,高い位置・計測精度をもつため,単なる旧データの閲覧に留まらず,その新たな,かつ最も有効な再活用法を行政諸分野において提示しうるものである。 そのため,研究全体の方向性としては,構築中のアーカイブを,教育・研究のみならず,迅速な震災復興等の基盤になるべき国土管理の技術の改善や土地問題の解決という応用面での活用しうる可能性について,土地に関わる専門家や県・市町の担当行政部署との十分な意見交換をもとに着実に検討することにある。その意味で,今後の研究の推進方策は,まずは関係部署・専門家たちとの意見交換の機会を昨年度以上に確保することである。また,そこでは関係する現行法や省庁の規則の限界も視野に入れるるべきことが判明してきているので,それらの改正提案をも含めて検討することが適切であろうと考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
第二年度(平成24年度)には,基礎資料の電子化においては未収集の県内各市町作成の大縮尺図の電子化に力を割く。また,アーカイブの基幹システムを用いた作業では,アーカイブ閲覧時の基本コンテンツとなり,空中写真と衛星画像をDEMモデルと組み合わせることで得られる高精度の3次元のジオラマモデルとオルソフォトマップを作成する作業を集中して行う。また,研究代表者を中心に,森林境界の画定作業や公図(地籍図)と現況とのずれの解消問題など,行財政上の重荷となっているいくつかの課題への,それら成果品および本アーカイブの3次元図化機能をいかに応用しうるかについて,土地家屋調査士会,および県内の関係諸機関との意見交換を初年度以上に広く行う。それと並行して,公図(地籍図)と現況とのずれの補正法,及び旧空中写真からの3次元モデルを森林境界画定に活用する手順と方法について,精度検定の本試験の実施を含め,研究開発を行うことを構想している。また,初年度に続いて衛星画像の標定法について調査・研究を続け,本研究課題の延長上に位置する研究ではあるが,空中写真と比べてまだ理論的・技術的に確立されていない衛星画像の標定法開発について,JAXAとの共同研究,及び特許出願を視野に,研究を進展させたい考えである。 なお,初年度において研究発表を行ったのは勤務先大学での公開発表会での発表のみで地理学関係学会での発表は行ってないので,次年度はそれと論文執筆も行う予定である。
|