研究課題/領域番号 |
23652191
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
飯嶋 秀治 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (60452728)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 文化相対主義 / つきあい方 / オーストラリア先住民 / 暴力 / 臨床心理学 / 介入 |
研究概要 |
本研究では、2007年よりオーストラリアで焦眉の的の一つとなってきた、オーストラリア北部準州先住民の児童性虐待疑惑問題に端を発した「北部準州緊急対策/介入政策」関し、「臨床人類学―文化相対主義とのつきあい方」を大きな主題として、暴力、福祉、健康という3つの視点から調査を進めるものである。 というのも、文化人類学の領域では、いわゆるポスト・モダンの人類学からの問題提起に依り、文化の「消滅の語り」と並行して「生成の語り」が登場したものの、世界的にはネオリベラリズム的潮流から生成してきたとおぼしき「暴力」現象が見受けられ、こうした文脈において文化の「相対主義/普遍主義」の問題が再考されねばならないためである。 ただしこれまでの研究では、「反・自文化中心主義」に立つとの抽象的提言か、「実感」を以て近代的認識支配を跳躍するとの原則的提言は呈示されてきたが、その語彙は必ずしも豊かとは言い難い。申請者自身はこうした「暴力」問題に、国外のオーストラリア先住民のフィールドで「理解」してきたのと並行して、国内では「躾」という文化的名の下での「虐待」問題に「介入」してきたため、いわば事態を事実問題として両側面から関わり、両先行研究の間には、複数の可能性があり得るのにも関わらず、この間を捉える語彙が不足しているために、殆どの論者が議論を通過してきてしまっていることに思い至った。 このため、平成23年度には、2007年以来、オーストラリアでは「北部準州緊急対策/介入政策」について、数多くの書籍が出始めているため、この政策を巡り、初年度は文献においてどのような対立軸があるのか、歴史的な深度(政策の問題化以前の議論)と、人類学以外の諸文献(特に医療・福祉学関係の諸文献)も含め、その議論の様態を分析することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文献収集は問題なく進んだが、平成23年度後期には入試問題作成委員を委嘱されたことから、国内を離れる訳にはゆかなくなり、平成24年の2月~3月に予定されていた現地調査に着手することができなかった。予算執行が7割程度にとどまったのもこれが理由である。
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今後の研究の推進方策 |
大学教員として奉職している以上、上記の理由での研究の遅延は止むを得ない。また他方で、孤立無援かと思われた本研究に、国内からも政治経済学方面からのメタ分析の論文が登場したことで、この遅れも大幅に遅れることなくとどまった。 なので、当面の方針としては、調査期間を当初の1年半から1年へと短縮し、平成24年度の調査履行を確認しつつ、可能であれば調査機関を半年間延長することを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の調査を8月~9月、2月~3月とする点は変更はない。ただし、必要に応じて前年度度の遅れを挽回するために、これに加えて短期滞在を考慮に入れる。
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