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2012 年度 実施状況報告書

臨床人類学―文化相対主義とのつきあい方

研究課題

研究課題/領域番号 23652191
研究機関九州大学

研究代表者

飯嶋 秀治  九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (60452728)

キーワードオーストラリア / 先住民 / 北部準州 / 北部準州緊急対策 / アリス・スプリングス / 飲酒 / 暴力 / 文化相対主義
研究概要

【研究の目的】本科研費「文化相対主義を飼いならす」は、オーストラリア先住民のなかで2007年から開始された北部準州緊対策を主題にして、文化人類学の文化相対主義をいかに飼いならすのかの具体的あり方を解明する。本年度は、夏休み(8~9月シドニーおよびアリススプリングス)を主な資料収集にあて、春休み(2~3月)をアリススプリングスでの主な現地調査期間とした。【研究実施】具体的には、本研究課題「文化相対主義を飼いならす」際の争点を整理するため、資料は北部準州緊対策(いわゆる「介入政策」)関連の書籍・論文・新聞、特に、中央砂漠地帯のアリス・スプリングス、地元先住民メディア会社で生産された北部準州緊急対策関連のDVD、また同会社で生産された地元先住民バンドのCD(これらには北部準州緊急対策のことがうたわれてはいないが、その主な原因となった飲酒とそれが引き起こす事件について歌われている)を収集した。次に、春休みにはそうして収集された資料に基づき、この争点に近く、かつ、外部からの調査者が接近しやすいという基準で、研究計画書段階で選定していた複数の先住民関連機関のうち、主な3機関(Congress Male Health Centre、Bush Mob OrganizationおよびTangentyerre Day & Night Patrol)に関してそれぞれ1週間の参与観察を行った。これらの組織はいずれもアルコール問題からくる問題を取り扱っており、先住民だけの組織から非先住民を含む組織まであり、その問題の抱え方を比較対照するために選ばれた。【意義、重要性】こうした3機関の比較をすると、共有しているのは先住民の飲酒問題であるというのが確認される。またいずれもスタッフに先住民を含んでおり、そのことで問題を抱えた先住民に接する際、「文化相対主義」を発生させない布陣をとっていることが注目された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

「やや遅れている」と判断した主な理由は、一昨(2011)年度の大学の入学試験時に、入学試験を担当したため、まるまる一期を渡航調査に費やせなかったためである。もう一つの理由は、今(2012)年度春の調査に出かけていた際、時期の人事が検討され、翌(2013)年度の入学試験の委員になったため、再び2~3月に渡航できないことが十分に予想されるためである。学内事情なので致し方ないが、こうした条件の中では今年度の調査は順調に進んだといえる。

今後の研究の推進方策

計画では3年で、1年目を文献、2年目を調査、3年目を報告書に充てる予定であったが、1年目に半期ずれこんでしまい、2年目はずれた中では最善を尽くしたが、翌年度も多くは望みがたい。1つは、15回の授業を行うために、試験がお盆直前までにずれ込み、国内で学生たちに文化人類学を実習させる機会もお盆以降に延期され、8月の渡航が望めなくなったためである。また上述したように、入試委員に選出されたため、2~3月の調査も望みがたい。このため、翌年度の調査は必然的に、夏期9月の現地調査と、春期3月数週間の調査程度しか望めないであろう。

次年度の研究費の使用計画

こうした中で、夏期に1週間ずつ3機関で行えれば申し分ないが、毎回1週間程度は半年分の新聞などのチェックが必要なので、最低2週間程度の調査機関となる。その機関の候補に挙がっているのはChild Protection部門の2機関と上述のBush Mobであり、その挨拶はすでに済ませているので、調査期間が短くなってしまっている中では最善を尽くす予定である。それでも、こうなってくると無理はできない。というのも、形式的に調査をやればいいわけではなく、夏と冬とでは町の先住民人口の動態も異なるので、それに合わせて調査を行う必要があるためである。なので、相手の状況を見て、その選択が最善であれば、半年から1年の調査期間の延期も考える。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) 備考 (5件)

  • [雑誌論文] アランタ研究黎明期2013

    • 著者名/発表者名
      飯嶋秀治
    • 雑誌名

      宗教研究

      巻: 第86巻第4輯375 ページ: 429-430

  • [雑誌論文] 書評:佐川徹『暴力と歓待の民族誌―東アフリカ牧畜社会の戦争と平和』昭和堂2012

    • 著者名/発表者名
      飯嶋秀治
    • 雑誌名

      文化人類学

      巻: 77(1) ページ: 180-183

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 社会的排除とのつきあい方―日本の児童養護施設における臨床心理学と文化人類学の連携2012

    • 著者名/発表者名
      飯嶋秀治
    • 雑誌名

      文化人類学

      巻: 77(2) ページ: 273-293

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 実践発表へのコメント2012

    • 著者名/発表者名
      飯嶋秀治
    • 雑誌名

      安全委員会方式の展開~第3回児童福祉施設安全委員会全国大会(岩手大会)報告書~

      巻: 3 ページ: 44-45

  • [学会発表] Solidality between Cultural Anthropology and Clinical Psychology against Abuse in Japanese Child Protection Institutions2012

    • 著者名/発表者名
      Shuji IIJIMA
    • 学会等名
      Inter-Congress of International Union of Anthropological and Ethnographic Sciences 2012
    • 発表場所
      KIIT University,Bhaneswar,Orissa,India
    • 年月日
      20121126-20121130
  • [学会発表] アランタ研究黎明期2012

    • 著者名/発表者名
      飯嶋秀治
    • 学会等名
      日本宗教学会第71回学術大会
    • 発表場所
      皇學館大学
    • 年月日
      20120907-20120909
  • [学会発表] 臨床人類学2012

    • 著者名/発表者名
      飯嶋秀治
    • 学会等名
      文化人類学会第46回研究大会
    • 発表場所
      広島大学東広島キャンパス
    • 年月日
      20120623-20120624
  • [備考] 九州大学研究者情報

    • URL

      http://hyoka.ofc.kyushu-u.ac.jp/search/details/K003121/

  • [備考] 教員・飯嶋秀治

    • URL

      http://www2.lit.kyushu-u.ac.jp/~com_reli/iijima/

  • [備考] 2012 Inter-Congress of IUAES

    • URL

      http://www.kiit.ac.in/iuaes/

  • [備考] 日本文化人類学会第46回研究大会

    • URL

      http://www.jasca.org/meeting/46th/

  • [備考] 日本宗教学会第71回学術研究大会

    • URL

      http://www.webdeki-blog.com/index_jars2012_1.html

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公開日: 2014-07-24  

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