最終年度の研究では、前期に(1)この半年間の新たな先行研究と地方紙のチェック、(2)昨年度調査したオーストラリア先住民関連施設の再訪問によるスタッフの動態のフォローアップ調査、(3)現地のフェスティヴァルによる先住民問題の包摂の動きを調査した。また後期は調査報告書をまとめ、見出した知見を抜き刷りにして配布する予定であったが、現在は紙媒体としなくても知見を伝達することが可能であるため、(1)この半年間の新たな先行研究と地方紙のチェック、(2)昨年度調査したオーストラリア先住民関連施設の再訪問によるスタッフの動態のフォローアップ調査に費やし、成果は共著原稿としてまとめた。 本研究目的は、「北部準州緊急対策」について「臨床人類学―文化相対主義とのつきあい方」を主題として暴力・福祉・健康という3つの視点で1年目に文献精査、2年目に海外調査、3年目に全国発表をすることであった。1年目に入試委員になったことから計画は半年ペースで遅れたが、2年目後半からの調査では児童養護機関や健康機関のような複数の先住民関連機関に参与観察し、調査は3年目の後半までずれ込んだが、文化人類学会と宗教学会の全国学会で3年間に5度の発表、全国誌に3度掲載、成果を共著の一章にまとめた。オーストラリアの先住民関連機関では(1)まず先住民が多数派の機関ではそもそも「文化相対主義」が発生しないこと、(2)非先住民が多数派の期間では文化アドヴァイザーとして先住民を雇用もしくはインタープリターを活用していること、(3)非先住民だけの機関は多様であるが少なくともその一部には自らの自文化中心主義を飼いならす行為を行っていることが明らかになった。ただこれは調査すれば終わる課題ではないのでこの調査を入り口にさらなる「つきあい方」を「臨床人類学」として実践研究してゆく。
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