研究課題/領域番号 |
23652192
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
増田 研 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 准教授 (20311251)
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研究分担者 |
宮地 歌織 佐賀大学, その他部局等, 助教 (40547999)
波佐間 逸博 長崎大学, 国際連携研究戦略本部, 助教 (20547997)
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キーワード | 医療人類学 / アフリカ / 医療多元論 / 治療希求行動 / マラリア / 混合研究法 / 国際保健 |
研究概要 |
平成26年度は当初の計画通り成果報告を行った。増田は日本国際保健医療学会において「多元的医療状況に対する民族誌的アプローチ:長崎大学国際健康開発研究科における医療人類学的調査の取り組みから」と題する報告をおこない、また波佐間は『アフリカ研究』に原著論文を発表した。本研究の成果は、以下の5点に要約される。(1)住民の医療知識と行動が多元的であるということを、個々の住民の医療行動の把握を通してモデル化することができる。たとえばKleinmanが示した3セクターモデルを援用することで、治療希求行動の多様性と地域特性を容易に理解できるようになるだろう。(2)住民の健康知識を、より広い文化的脈絡のなかで理解することができる。とりわけ現地の宗教や信仰は医療行動に対して強い影響力を持っており、こうしたコスモロジーの理解に民族誌は向いている。(3)保健医療施設へのアクセスが改善されていない場所(とりわけ農村部)においては、自家治療、自己投薬、様子見、自宅分娩、伝統的治療師の訪問といった行動が、第一治療希求となる。そのため医療セクターへのアプローチは遅れ、民間セクターの影響力が強くなる。医療セクターとは異なる次元における行動を民族誌的に捉えていく必要がある。(4)民族誌における質的アプローチは多くのサンプル数を稼げないかわりに、豊富な変数を拾い上げることを可能にする。そうした変数の多くは医学的な語り口には出現しないたぐいのものである。(5)民族誌的アプローチによって得られた知見は、適切な量的研究によって補完されることが望ましい。
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