本研究においては、2回のパキスタン調査を行った。まず、2012年1月から2月にかけて、パキスタンのスィンド州を訪問した。同地は、2009年ならびに2010年の2回にわたって大洪水の被害を受けた地域である。同州の州都カラチにベースを置き、洪水の被災地支援を行ったNGOであるアル・カイールを訪問した。その後、洪水の被災地である内陸部スィター地方に移動し、プロジェクトについての説明を受けた。2013年1月には、首都イスラーマーバードならびにパンジャーブ州の中心都市であるラーホールに拠点を置く、NGOを訪問した。その際には、洪水支援と並んで、2005年に発生したカシュミール地震時の支援活動について聞き取り調査を行った。 これらの調査の成果発表は、次のような形でおこなった。まず、2012年6月に、国立民族学博物館の共同研究「NGO活動の現場に関する人類学的研究―グローバル支援の時代における新たな関係性への視座」において発表した。これは1回目の調査に基づいた内容であった。2回目の調査に関する報告も、同研究会において、2013年5月に行った。 発表時に得たコメントを受けて、「ムスリムNGOの理念と活動-パキスタンとトルコの事例から-」(子島進/ダニシマズ・イディリス著、『アジア文化研究所年報』47号、東洋大学アジア文化研究所)、ならびに『ムスリムNGO』(2014年、山川出版社)を成果として刊行した。
|