平成25年度までにウィチョール族村落における民芸品製作の状況、および、メキシコの主要なリゾート観光地におけるウィチョール族民芸品の製作販売の状況について確認を進めた。大都市部における民芸品製作販売の状況とその収益の実態についての情報がさらに必要であったため、平成26年8月20日から30日にかけて、大都市部(グアダラハラおよびメキシコシティ)に居住するウィチョール族情報提供者への聞き取り調査を実施した。 その結果、同業者とのネットワークを構築しやすい大都市部においても、彼らの民芸品製作販売が非常に閉鎖的であることを確認することができた。すなわち、ウィチョール族社会における民芸品の製作販売は、家族や親族を単位として実践されており、同業者同士が共同して民芸品の販売網を築く傾向は確認できなかった。 さらに、その家内制手工業的な民芸品製作販売は非常に不安定なものであり、メキシコで生活するために必要な最低限の収益しか上げることができない現状を確認することができた。 カメイ美術館(仙台市)において実施されたウィチョール族による民芸品製作のワークショップ(平成27年2月22日)に参加し、ウィチョール族民芸品が海外において紹介される事例を視察した。 これまでの研究報告として、論文「ウィチョール族民芸品販売の現状と問題」を関西外国語大学紀要に投稿し、メキシコのリゾート地における非ウィチョール族によるウィチョール族民芸品販売の実態と、大都市部におけるウィチョール族による民芸品販売の実態を明らかにし、販売形態の不安定さや競争相手の増加が原因となり、後者が今後においても発展的に規模拡大し、収益を向上させる要素が見られないことを考察した。
|