研究課題/領域番号 |
23653001
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鈴木 賢 北海道大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (80226505)
|
研究分担者 |
坂口 一成 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (10507156)
|
キーワード | 台湾法 / 比較法 / 刑事訴訟法 / 刑事司法改革 / 捜査の可視化 / 捜査の適正化 / 防御権 / 取調の録音・録画 |
研究概要 |
今年度は3年計画の2年目にあたることから、前年度の実績を踏まえ、基礎的な資料収集を継続するとともに、台湾における取調の可視化と夜間取調の原則的禁止がいかに実現し、運用されてきたかについて立ち入った検討を行った。 1 取調の可視化と夜間取調の原則的禁止制度導入の経緯が明らかになった。 自白の任意性を確保し、被疑者・被告人の弁護人依頼権を保障することが目指されたことになる。具体的には刑事訴訟法が1997年に改正されることで、以下のような一連の改革が断行された。黙秘権の明定(95条1項2号)、脅迫、詐欺、疲労訊問の禁止(98条)、夜間(日の出前、日没後)訊問の原則禁止(100条の3)、これに反する方法で得られた自白は原則証拠から排除(158条の2)、取り調べ過程の可視化(訊問全過程の録音録画を原則義務づけ、調書と録音・録画が一致しない場合は証拠から排除)(100条の1)、弁護士依頼権を強化(被疑者の弁護士との接見・交通権を保障)(34条)、3年以上の有期懲役を科せられる可能性のある事件、知的障がい者の被告などにつき強制弁護制度導入(31条1項。公設弁護人制度)。 2 本研究において得られた中間的成果をアジア法学会(2012年11月17日、於東京大学東洋文化研究所)でシンポジウム「台湾法の歴史的展開と現状」の一環として、「台湾刑事手続の歴史的展開と現状」と題する報告を行い、参加者からの批判を仰いだ。 結論的には、政治の民主化、社会の成熟と刑事司法改革が同時に進行こと(1997年以後19回の改正。大法官、最高法院の解釈、判例に変化)、憲法上の人権(8条人身自由、16条訴訟権)の価値への社会的コンセンサスが改革を後押していたこと、刑事司法改革には東アジアに共通する重い伝統文化との戦いが伴っていたこと、手続構造のドイツ型からアメリカ型への転換のなかで達成されていったことを指摘した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題の解明に向けて資料収集、解読、現地調査、関係者に対するインタビューを順調に進め、中間的成果について学会での報告を終えたことで、最終的な目標に向けて前進することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
補充的な資料集を継続するとともに、今年度は最終年度にあたるため、これまで実現できていない研究協力者(台湾東海大学教授・陳運財、台湾大学教授・王兆鵬)を台湾から招聘して、札幌においてワークショップ「台湾における刑事手続改革」(仮)を開催する予定である。さらに最終的な成果のとりまとめを行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
前年度に予定していた台湾の研究協力者を招いたワークショップが招聘者の都合により日程調整がかなわず、実施することができなかったため、今年度予算の一部を次年度に繰り越して使用することとなった。次年度はこれを実施することにより、研究プロジェクトの完成に向けて作業を進めることとする。
|