研究課題/領域番号 |
23653006
|
研究機関 | 桐蔭横浜大学 |
研究代表者 |
出口 雄一 桐蔭横浜大学, 法学部, 准教授 (10387095)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 基礎法学 / 刑事法学 / 日本史 |
研究概要 |
平成23年度は、刑事司法の「日本的特色」の歴史的検討のうち、戦時下から戦後初期を中心とする法律家・法学者の学問形成の過程、及び、占領下におけるGHQ側との渉外法務の影響を明らかにするための基礎となる史資料の収集と、研究の枠組みの構築に力点を置いて活動を行った。 刑事司法の「日本的特色」を検討するにあたっては、刑事法学を含めた日本の法学が、いわゆる「学説継受」期を超えていかに自覚的に形成されたかを総体的に明らかにする必要がある。そのために、国立国会図書館や各大学図書館などにおいて収集した史資料や、古書店において購入した同時代の書籍・論文などを踏まえて、1930~40年代における法学のあり方を取り扱う「戦時法研究会」において、日本の法学の多様化としての大学の再編についての研究報告(5月14日)、及び、経済統制法令の運用とその処罰をめぐる研究報告(10月8日)を行った。また、現行刑事訴訟法を含む戦後法制改革が上記の戦時下の法学ととどのような位相にあるのかを検討することを目的に、戦後初期の法学の形成に大きな影響を与えた法社会学論争・法解釈論争についての報告を「占領・戦後史研究会」において行った(3月31日)。 以上の他、9月3日から11日にかけて、アメリカの国立公文書館を訪問して資料調査を行い、占領管理体制の下で各地方軍政部において行われた軍事占領裁判所の裁判記録を中心とする史料をデジタルカメラを用いて撮影・収集した。撮影した史料については、現在整理を進めている段階である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の全体計画のうち、検討の枠組みの構築については、今年度に行ったいくつかの研究報告を準備する過程において、隣接領域における先行研究、とりわけ「総力戦体制」や「戦時動員体制」をめぐる政治学・経済学などの社会科学の研究動向の把握を含め、おおよその見通しを立て、併せて、刑事司法の「日本的特色」の構築における法学者の役割についての検討を行うことが出来た。また、アメリカ国立公文書館に所蔵されている史料については、占領管理に関する史料の所蔵状況をある程度把握することが出来た。 しかし、とりわけ占領後期における法制の再編、例えば、いわゆる「ポツダム命令」の改廃や、GHQ側からの訴訟の迅速化の要請については、十分に検索・収集することが出来なかった。この部分は、次年度に再訪問を行い、調査を継続したいと考えている。国内の史資料については、公刊資料についてはある程度収集することが出来たが、公文書館や法務図書館、各大学図書館に所蔵されている原史料や統計資料については十分に調査を行うことが出来ていない。これらの点は、今後の研究の遂行の過程で調査を行い、史資料の収集に務めることとしたい。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度においては、まず、今年度に行ったいくつかの研究報告をまとめて、順次論文の形で公表することとしたい。また並行して、今年度アメリカ国立公文書館において収集した史料を整理・分析して、その成果を用いた研究を進める予定である。更に、本研究の申請後に、刑事法研究者・実務家との共同研究として明治期以降の日本の刑事弁護の形成過程について調査する機会を得たので、その成果についても研究に組み入れることを検討している。 上記の作業を通じて、刑事司法の「日本的特色」の形成過程についての基礎資料を準備し、既往の研究と総合して、その全体像を史資料に即して実証的に明らかにすることを最終的な目標としたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度においては、今年度に引き続いて、アメリカ公文書館における資料調査を継続することとしたい。また、書籍及び論文の形で公刊されている史資料の収集についても継続して行う予定であるが、これに加え、国内の各機関において網羅的な資料収集(デジタルカメラによる撮影などを含む)及びそのデータ整理を行うために必要な場合は、資料整理補助費を支出することを検討している。更に、今年度は震災の影響もあってスケジュールを策定することが難しかったが、刑事司法の「日本的特色」の形成過程についての知見を深めるために、隣接領域の研究者や研究機関のスタッフなどからの専門的知識を得る機会を設ける方向で調整を行うこととしたい。
|