平成24年度は、刑事司法の「日本的特色」の歴史的検討のうち、昨年度に引き続いて、戦時下から戦後初期を中心とする法律家・法学者の学問形成の過程、及び、占領下におけるGHQ側との渉外法務の影響を明らかにするための基礎となる史資料の収集と、研究の枠組みの構築に力点を置いて活動を行った。 刑事司法の「日本的特色」の背景としての、刑事法学を含めた日本の法学の形成過程に関しては、昨年度に引き続いて、1930~40年代における法学のあり方を取り扱う「戦時法研究会」において、公法/私法とは異なる新たな法領域としての「社会法」のあり方、及び、現行刑事訴訟法の制定過程に深く関わった団藤重光の戦前の活動についての研究報告を行った(7月14日)。「戦時法研究会」での報告に関しては、昨年度の報告内容を加味して、「戦時法」全般の枠組みを明らかにするための試論を『桐蔭法学』誌に発表した(3月25日付)。また、昨年度より加わった日本の刑事弁護の形成過程についての刑事法研究者・実務家との共同研究についても、論稿を脱稿済である(未刊行)。 以上の他、9月2日から10日にかけて、アメリカの国立公文書館を訪問して資料調査を行い、占領管理体制の下での渉外法務の実態や、憲兵の活動と日本側の警察との関連についての史料をデジタルカメラを用いて撮影・収集し、その整理・分析を進めた。更に、日本社会事業大学附属図書館所蔵の「窪田静太郎日記」についても、出張の上資料調査を行い、デジタルカメラによる撮影を行った(11月12日)。
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