研究課題/領域番号 |
23653007
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
小塚 真啓 金沢大学, 法学系, 准教授 (60547082)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ゲーム理論 / 予見可能性 / 租税法律主義 |
研究概要 |
本研究は、伝統的な租税法学では必ずしも注目されてこなかった租税法律関係における複数の納税者の関係の解明に注目し、事業体の留保利益に対する課税などについて、あるべき姿を解明することを目的としている。本年度は、当初の計画に従い、先行研究の調査・整理と組織の経済学・ゲーム理論の基礎知識の習得のための調査・研究を行った。先行研究の調査から明らかになったのは、伝統的な租税法学において当然視されてきた租税法律関係における予見可能性の確保について、当事者のインセンティブへの影響の観点から厳しい目が向けられつつあることである。E.g. David A. Weisbach, Is Knowledge of the Tax Law Socially Desirable?, available at http://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=1895572. また、会計分野でゲーム理論を利用した移転価格税制に関する研究も登場してきている。村上裕太郎「移転価格税制における二国間事前制度(BAPA)のモデル分析」太田康広編著『分析的会計研究』(中央経済社・2010年)など。これらの内容や関係の紹介・整理・分析について、北陸公法判例研究会でも報告を行った(2011年12月18日)。現在、この報告を基とした論文の作成を行っており、次年度中での公表を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究は、次の2つを行う予定であった。(a) 法人所得課税に関する先行研究の整理、(b) 組織の経済学とゲーム理論の知見の習得(a)については、大まかな取り纏めは完了し、研究発表の段階に達することができた。現在、研究報告によって得られたコメントを踏まえ、論文の作成を進めている。(b)については、書籍等による知見の収集に加え、行動経済学やゲーム理論を応用した法学研究を進めている研究者と交流し、意見交換などを行うことができた。本年度以降、自身の分析を進めていくにあたり、より交流を密にしていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、組織の経済学とゲーム理論の知見を応用した法人所得課税(特にその場合の課税権者を含めた当事者の間での租税法律関係)の分析を開始する。同時に、昨年度の研究発表を基として、論文(あるいは研究ノート)の作成も進める。分析にあたっては、計画の通り、構成員間のエージェンシーとプリンシパルの関係に着目して法人所得課税の再検討を試みる先行研究(Hideki Kanda & Saul Levmore, Taxes,Agency Costs, and the Price of Incorporation, supra)を出発点とする。この先行研究では明示的には分析の対象とされていなかった課税権者と構成員の関係に関しては、上述した予見可能性の再検討や移転価格税制のゲーム理論分析が有益な示唆となると考えられ、それらを踏まえて分析を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
ゲーム理論に関する新しい書籍などが出版されており(岡田章『ゲーム理論(新版)』(有斐閣・2011年)など)、これらの書籍の購入にあてる。また、国内の研究者との交流等のための旅費にあてる。
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