研究課題/領域番号 |
23653009
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
前田 定孝 三重大学, 人文学部, 准教授 (10447857)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 地域防災計画 / 災害復興 |
研究概要 |
当該年度は、主として日本における災が法制度の全体像の把握および東日本大震災における実態調査を行った。 そのなかで、9月に陸前高田、大船渡両市に聞き取り調査に行った。 研究成果としては、8月に開催された民主主義科学者協会法律部会行政法分科会の合宿において、日本の災害法制研究史およびそのなかでの主要論点についてサマリー的な報告を行うとともに、とりわけ、災害リスクアセスメント、復興に関する諸問題につき、深めることができた。そのなかでは、日本における災害法制史が相対的に遅れていたこと、論点としては、阪神淡路大震災時点までは主として水害時における堤防の強度の判断基準が裁判等で問題となっていたのに対し、阪神淡路大震災後は、復興とりわけ被災者生活再建支援制度のあり方や仮設住宅の設置・運営などの問題が新たな問題として提起されたこと、さらに東日本大震災においては、市役所等の行政施設が津波で丸ごと消滅するなか、どのようにして日常的な行政活動を、災害救助と両々相まって進め、そこではいかなる国・都道府県との協力関係が法的に要請されるのかについての論点が提示されてきていること、とりわけ東日本大震災におけるキーワードとしては、〈阪神〉における「被災者生活再建」であったのに対し、〈東日本〉では「生業再建支援」がその重要な側面をなしつつあることが明らかにされた。 この成果は、学内的にも人文学部の公開ゼミなどにおいて発表されるなど、地域貢献活動としての位置付けをもつものとなった。 同様に、現在人文学部社会動態研究センターにおいてとりくみ中の災害時業務継続計画(BCP)、とりわけ自治体レベルにおける同計画の策定につき、その問題点などについて検討した。この成果の一部は、今年度を通じて紀要等で発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予算のうちの最大の部分を占める海外調査が実施できなかった。この点につき、アメリカにおける災害法関係の資料が不足していること、および上記のように災害法研究がまだまだ法学的にも充分に進展してないことが挙げられる。そのなかでも、これまでの日本災害法制研究についての資料は基本的に収集を完了したこと、および災害法関係のアメリカ法関係資料についても基本的な部分を入手し得たことから、今年度については、海外調査を実施したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
以下の研究論文執筆計画を準備している。 防災計画につき、「災害時における要援護者対策とその問題点」/「地域防災計画の民主主義的統制」/「防災計画における被害想定の民主主義的統制」/「原子炉保有施設と地域防災計画」/「市町村の災害時業務継続計画(BCP)」 復興行政につき、「被災者に対する生活と生業の再建支援のあり方」/「大規模震災からの復興の考え方」/「市町村合併と東日本大震災」 災害法全般につき「災害法制度の断片化と統合」/「日本災害法研究史」 アメリカ法化法研究につき、「惨事便乗型資本主義における防災行政の民営化――カトリーナ災害とアメリカ連邦政府」 このうち現段階で作業中のものは、上記の地域防災計画論およびアメリカ法制度である。夏以降、残りの課題についても作業していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
2011年度については、当初計画していたアメリカ・ルイジアナ州調査が実施できず、予算未使用額を残してしまった。アメリカにおける文献が充分にそろわなかったことと、それに先立つ日本国内における災害法についての事前の論点整理が進まなかったためである。 この点も踏まえつつ、今年度は主としてアメリカ法調査および東北調査を2回程度実施したい。 とりわけ、今年度8月にアメリカ・カリフォルニア州、および1月にはルイジアナ州を訪問したいと考えている。 東北については、とりわけ過去の地域防災計画の検証につき、陸前高田、大船渡、および宮古市を考えている。
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