研究課題/領域番号 |
23653013
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小畑 郁 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (40194617)
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研究分担者 |
高村 ゆかり 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (70303518)
水島 朋則 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60434916)
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キーワード | 国際法学 / 日本法 / 国際法と国内法の関係 / 主権免除 / 入管法 / 環境法 |
研究概要 |
2012(H24)年度においては、まず第1に、2009年の日本の裁判所による国際法判例の収集・分析とデータベース化の作業をすすめた。実は、新たなソースの発見により、分析作業のための労力は飛躍的にふくれあがったが、本研究参加者の総力を挙げてすすめ、データベースと解説の最終原稿を作成することができた。 2009年の判例の分析は、たとえば、2004年の入管法改正で導入された難民認定申請者に対する仮滞在許可制度について、裁判所が、難民条約の要請という側面をほとんど看過し、入管行政の観点を重視しており、その結果、法文とは逆に許可が裁量的なものとなってしまっていることが明らかになった。 国際義務と日本の実務との関係という観点からの個別研究として、まず第1に、主権免除についての本格的で包括的な研究が刊行された。ここでは、とくに、日本の国際法判例の展開と到達点が分析され、それとの関係で、2010年施行の対外国民事裁判権法の評価が試みられている。第2に、国際環境法の動向との関係での日本の実務については、とくにポスト京都議定書の国際レジームを日本の法政策との関係で分析した研究、福島原発事故との関係で環境に関する国際義務と日本の実務を評価する研究を発表した。第3に、日本の移民政策の転換点とも捉えられる入管法2009年改正を、実務との関係で分析した研究を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、2012年度頃から児童の権利条約締結との関係での国内法整備についての議論と資料を整理し、分析を開始することとなっていたが、この面での作業に着手することができていない。 その理由の一つは、本研究の基礎作業と位置づけている判例データベースの作成作業において、新たなソースが発見され、分析対象判例がこれまでの数倍から10倍ちかくにふくれあがったため、この面に割く労力が予想以上に大きかったことがある。 もう一つは、本研究参加者のなかに国際環境法についての有力研究者がおり、ポスト京都議定書レジームや福島原発事故との関係での社会的・国際的要請もあり、児童の権利分野での研究よりも、そちらの方の研究とその発表に追われているということがある。
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今後の研究の推進方策 |
日本の国際法判例のデータベースの作成を、本研究の基礎作業と位置づけて引き続きそのために必要なエフォートを割く。 社会的・国際的要請の変化も考慮して、必要な場合、特別の分析対象を「児童の権利」から「環境」にシフトして、国際的義務の日本における実施をめぐる判例と行政・立法実務の関係の分析を引き続きすすめる。 本研究がなお「萌芽的」段階にあることを踏まえ、国内・国外の関係研究者・実務家との交流を重視して、総合・比較の視座を確保する。
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次年度の研究費の使用計画 |
2012(H24)年度に最終原稿が完成しており、出版側の事情により掲載が先の号に回された2009年の日本の国際法判例についてのデータベースと解説について、抜き刷りを作成し、送付して関連する研究者のレヴューをうける。
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