研究課題/領域番号 |
23653019
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
指宿 信 成城大学, 法学部, 教授 (70211753)
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キーワード | 治療的司法 / 当事者主義 / 更生 |
研究概要 |
処罰か否かを決する弾劾的な訴訟構造に基づく当事者主義に立った現在の日本の刑事司法制度の限界について、治療的介入的、非当事者主義的訴訟モデルである「治療的司法」の導入可能性に関する予備的調査として、様々な専門家の知見をとりまとめるため以下の研究活動を実施した。 第1に、関係各方面に対する国内ヒアリングを前年に引き続いておこなった。弁護士、社会福祉士、精神医療関係者等に、現在の刑事司法手続において再犯防止を目的とした政策的な措置が十分に整備されていない点とそれを補う工夫について聞き取りをおこなった。 第2に豪州をベースとして比較法的な調査を実施した。文献調査を行うと共に、豪州の司法関係者へのヒアリングを実施し裁判官、心理学者、検察官、弁護士らに対するヒアリングをおこなった。更に、国際的な治療的司法のネットワークに参加し、豪州国内における治療的司法に関するセミナーに参加し知見を深めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国内におけるヒアリング調査はまだ十分とは言えないが、文献資料の収集は目標を達成していると考える。国際的なネットワークについては、豪州を拠点としつつ世界的な広がりを有する治療的司法(TJ)グループに参加することができた。情報収集や意見交換も迅速におこなえるようになっている。
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今後の研究の推進方策 |
国内外における人的ネットワークの確立は順調に進んでいることから、今後は日本における実質的な研究グループの立ち上げや、治療的司法概念を啓蒙するための書籍の刊行計画などの可能性を追求したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
前記の国際的な治療的司法のネットワークに参加したことから、7月にオランダのアムステルダムで開催される「国際法と精神医療学会」における治療的司法関係ワークショップに参加を依頼された。こうした大規模な国際学会において日本の法律家が治療的司法について発言することは初めてとなる。 この会議への参加を本挑戦的萌芽研究の重要な節目と位置づけ、裁判員制度下における治療的司法思想に基づくプログラムの導入可能性を提起していきたい。
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