平成25年度の研究実績としては、次の通りである。 本研究は、米国の確定拠出企業年金制度であるEmployee Stock Ownership Plan(以下「ESOP」とする)を研究対象としているため、本年度も引き続きESOP、ERISA、及び内国歳入法典に関する文献等の収集及び調査を行った。また本研究は、閉鎖会社及び企業買収についても研究対象としていることから、米国における会社法関連の文献等の収集及び調査も行っている。加えて、わが国への導入可能性を探るため、「日本版ESOP」に関する調査も並行して行った。 本年度は最終年度に当たるため、以上の調査結果を基に、米国の閉鎖会社において、Employee Buyout(以下「EBO」とする)の一手法として、leveraged ESOPが広く利用されていることにつき、わが国においても同様の広がりが見込めるか否かについて検討を行った。それによると、米国では、閉鎖会社の経営者である会社の所有者が、ESOPの一形態であり、ESOP信託自らが借入可能なleveraged ESOPを用いて事業承継を行う場合、租税優遇措置を受けることができることから、多くの閉鎖会社でleveraged ESOPが採用されている。その他にも、閉鎖会社においてESOPを用いてEBOを行うに当たっての法整備や、それを行うに当たっての環境も整っていることから、閉鎖会社の経営者が当該会社から撤退するに際して、採り得る選択肢の一つとされているものと考えられる。一方、わが国の「日本版ESOP」に関しては、特別な法律で規制されている訳でもなく、租税優遇措置もないので、閉鎖会社の経営者が採り得る選択肢としては、あまり考えられないように思える。
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