研究課題/領域番号 |
23653032
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
勝久 晴夫 大阪大学, 知的財産センター, 特任助教(常勤) (00597958)
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キーワード | 消費者法 / 知的財産法 / 商標法 / 交錯領域研究 |
研究概要 |
平成24年度は、1.先行研究の調査と分析、2.意見交換会の実施、3.研究成果の公表、4.海外調査を行うことを予定しており、次の通りの実績が得られた。 まず、1.については、前年度の調査により一定の方向性の得られた「商品の表示を巡る知的財産法と消費者法の交錯」を中心に分析を行った。また、デジタルコンテンツを巡る知的財産権に関する先行業績を調査し、収集・整理を行なったほか、権利の消尽、版面権、フェアユース法理など、電子商取引が行われる以前から存在する問題についても先行業績の調査、収集を行った。さらに、「消費者保護論の台頭が知的財産法へ及ぼす影響」についても、「商品の表示を巡る知的財産法と消費者法の交錯」の分析を行う過程で重要な示唆が得られた。 次に、2.については、1.で行った「商品の表示を巡る知的財産法と消費者法の交錯」に関する分析した結果、商標法51条及び53条における「品質誤認」の考え方について、消費者法的アプローチからの新たな解釈が可能であるとの見解に到達し、係る見解をもとに、2012年12月22日に開催された同志社大学知的財産研究会、および、2013年1月24日に開催された大阪大学知的財産センター研究報告会において、研究報告を行い出席した研究者と意見交換を行った。 また、3.については、「商品の表示を巡る知的財産法と消費者法の交錯」に関する研究成果として、「商標法の消費者法的役割ー品質誤認概念を中心にー」『仙元先生傘寿記念論集』(弘文堂 2013年刊行予定)として脱稿した。 4.については、2012年9月から1ヶ月間、報告者が所属する大阪大学の業務の一環として、海外調査を命じられたため、本年度には実施できなかった。次年度において速やかに実施し、調査を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的において示した、1.商品の表示を巡る知的財産法と消費者法の交錯、2.デジタル製品・オンライン市場での知的財産製品の取引と消費者法の交錯、3.大学の知的財産ガイドラインによる「学生の発明」の権利処理と消費者法との関係、4.消費者保護論の台頭が知的財産法へ及ぼす影響、という4つの柱のうち、本年度は1及び2を中心に研究を行うとともに、かかる研究経過において、4についても一定の方向性が得られたことから、研究はおおむね順調に進んでいると評価できる。 今年度の研究では、消費者法制の中で重要な地位を占める品質規制について、商標法の品質誤認概念等の新しい解釈を試みることにより、商標法が一定の役割を果たしうるとの研究成果が得られた。 係る研究成果は、商標法に対する消費者法的アプローチによって可能となるものであり、近年の消費者保護論から導かれる実定法への解釈論的影響を知的財産法の中においても確認するものとなると考えられることから、引き続き、本研究を継続することにより、当初の目的を達成することができるものと思われ、本年度の研究はおおむね順調に進展したものと評価することができると考える。
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今後の研究の推進方策 |
まず、本年度実施できなかった海外調査を実施する。 次に、これまでの調査により、一定の方向性が得られているデジタル製品・オンライン市場での知的財産製品の取引と消費者法の交錯について、成果を取りまとめるとともに、消費者保護論からの知的財産法への解釈的影響について、さらに分析を進める。 以上を経て得られた研究成果を、本研究の研究報告書として取りまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度海外調査を実施できなかったため、その分の研究費を次年度に繰り越している。この繰り越し分を中心に、海外調査旅費として40万円程度を充てる予定である。 また、物品費として本研究に関連する新刊図書の購入、及び海外調査で必要となる消耗品等の購入に20万円程度を充てる。 そのほか、国内旅費として10万円程度を見込んでいるほか、必要に応じて人件費、通信費等を支出する予定である。
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