研究課題/領域番号 |
23653042
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鈴木 一人 北海道大学, 大学院公共政策学連携研究部, 教授 (60334025)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 宇宙政策 / 国際構造 / 技術の汎用化 / グローバル・ガバナンス / 宇宙利用 |
研究概要 |
本年度の実績として、研究計画に基づき、韓国での調査ならびにイギリス、フランスにおける調査を行い、国際社会における宇宙技術の汎用化とそれがもたらすインパクトに関する研究を推進した。とりわけ、本年度の成果として重要なのは、国連軍縮研究所の招聘による、国連総会第一委員会における公開イベントであるTransparency and Confidence Building Measures in Outer Space Activities: Looking Back & Moving Forwardにメインスピーカーとして講演し、2012年度から進められる宇宙空間の安全保障の政府専門家会合に出席する政府委員やニューヨーク在住の各国外交官に対して、宇宙空間の安全保障のための国際的な取り決めについてを論じた。また、日本国際政治学会において、宇宙技術の汎用化に伴う、国際的な安全保障の脅威の拡散を防ぐための輸出管理についての研究成果を論じた。11月にはイギリスのブリストル大学でのシンポジウムに招聘され、アジアにおける宇宙安全保障問題について論じ、さらには外務省の外郭団体である日本国際問題研究所が主催する日米金沢会議において、日米間の新たな協力分野としての宇宙安全保障の問題を取り上げて論じた。さらに、『海外事情』2011年11月号にヨーロッパにおける宇宙防衛産業が途上国に対する輸出と技術流出の管理を同時に進めている点を論じ、また、外務省の支援を受けて発行されている『外交』の第11号では日本の宇宙政策と安全保障戦略との関係について論じた。こうした活動が外務省における制度改革によって総合外交政策局に宇宙室を設置するということにもつながり、宇宙技術の汎用化による国際政治経済の構造変動の最前線に自らの研究を応用するという機会を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は3年を目標に完成することが目的であったが、1年目から多くの実績を上げ、実際の宇宙のグローバル・ガバナンスを司る場で直接外交官や関係者に対して自らの研究内容を報告するという機会に恵まれ、また、いくつかの学術誌、外交専門誌に論文を掲載することができた。これは当初の予定よりもはるかに早い段階での発表であり、その意味では未完成の研究の段階で発表せざるを得なくなったのは残念であるが、これらの報告や論文を通じて、様々なフィードバックを得て、研究のレベルが上がっていることは想定外の幸運と考えている。その意味でも一年目の研究として、予定通りの調査を行うだけでなく、予定外のチャンスも得ることとなり、研究の評価としては十分すぎる到達ができていると考えている。 今年度の予算は最終的に2,540円の残額が出たが、これは急激な円高による支出予定の変化に伴うものであり、2月に行った調査にかかった金額が最終的に確定した後、残額が小額であったため、それを活用する使途を見つける時間もなかったため、未使用額が発生した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度はラテンアメリカを中心に研究を進めていく。まだ十分に国際組織がなく、各国ごとに調査を進めていく必要があるが、中心となるのはメキシコとブラジルである。ブラジルは中国との関係に重点を置き、ロケット開発や地球観測衛星の開発に積極的に取り組んでいるため、ブラジル宇宙機関(AEB)を中心として、新興国が現在の国際秩序にどのような役割を果たしているのかを調査し、ブラジルにおける宇宙利用を積極的に行っている環境省や国土利用省などへの聞き取り調査も行う。また、同じくメキシコでも調査を行い、現在設立を準備しているメキシコ宇宙機関(AEXA)の設立状況や、宇宙システム利用の現状の調査を行う。なお、平成24年度の後期から長期出張でアメリカ合衆国のプリンストン大学に滞在し、研究を進めていくことになっており、ラテンアメリカ諸国へのアクセスは日本にいるときよりも容易となると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度における研究は、ラテンアメリカ諸国の実情に関する調査が中心となるため、限られた研究費の中では旅費に用いる割合が多くなることを予定している。また、移動が多くなるため、移動先での情報収集や通信などのための機器を整備する必要があるため、物品費としても一部計上する。平成23年度の残額である2,540円は旅費として活用する予定である。
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