EU域内における宗教課題は、ヨーロッパの伝統的な課題である国家と協会の関係ではなく、キリスト教と他の宗教との共存に関する事柄であるといえる。しかし、EU加盟国は、国教をもっているとしても、「世俗主義」を大原則としており、EU統合において宗教があえて議論されることはまれである。そうした状況のなかで、本研究開始した時期とほぼ時期を同じくして、いわゆる「アラブの春」の体制変動が起こり、そのことは、体制変動を経験したアラブ・中東諸国との関係の在り方を再考することをEUに迫った。すなわち、EUはイスラム教と正面から対峙することを迫られたが、反応は鈍い。EU側の現状は、研究期間終了後も大きな変化を見せていない。ひとまずは、「アラブの春」の勃発以後の2年間の状況の事実の確認、展開とEUが打ち出した対応の分析をまとめることができた。
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