研究概要 |
1, 効用の諸性質を進化生物学的見地から導出する試みの1つとして、「効用の相対性およびその所得可変性」について生物学的基礎付けを行った。その結果は、昨年度作成した論文1本 (1, 投稿中) に加えて、新たに2本の論文 (2, 3, 共にworking paper。現在、出版の適切な時期を待っている) にまとめた。それらの内容は、それぞれ、(1) 効用の相対性とその所得可変性を行動生態学の知見より生物学的に基礎づけ、(2) 相対的効用の所得可変性を経済学に導入して近代の経済成長と出生率転換を理論的に説明、(3) 相対的効用の所得可変性とその出生率と教育の関係から、幸福度・出生率・教育・経済成長の関連を説明し実証的に証明、である。 この一連の研究によって、生物学的に予想された選好を経済学モデルに導入し社会現象を説明し得ることを示した。これは、生物学と経済学の相互補完性を示す具体例として、今後につながる重要な成果だと考えている。 2, 子どもの時間選好率に関する論文 “Why are children impatient” は引き続き投稿中である。そしてこの論文の成果を利用し、Value of Life の概念を生物学と経済学の両面から考察した論文を1本仕上げた。この論文は『行動経済学』より出版予定である。またこの論文に関しては、オーストリア・ウィーンのVIDの研究者である Michael Kuhn と2012年11月に会い、協力を仰いだ。今後の拡張においては、共同研究とすることも視野に入れている。 3, 交付申請書の研究計画で示した「効用の諸性質を経済学においてどうまとめるべきか」という課題に関しては、幸福度研究も含めサーベイを行い、アプローチの仕方を含め、その方向性を現在考察中である。
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