研究課題/領域番号 |
23653062
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
田北 俊昭 山形大学, 人文学部, 准教授 (60261674)
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研究分担者 |
貝山 道博 山形大学, 人文学部, 教授 (40096392)
松尾 剛次 山形大学, 人文学部, 教授 (30143077)
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キーワード | 地域ブランド |
研究概要 |
本研究では、地域ブランド商品の価値評価を行うとともに、地域ブランドの構築メカニズムを明らかにしている。現在まで、企業のブランド価値の研究はマーケティングの分野で進んでいるが、地域経済の分野で包括的な地域ブランド研究の概念整理と包括的な分析はまだ進んでいないが、新しい地域ブランド経済・経営分野を提案することになる。 1)地域経済学の視点から、地域の高級ブランド商品やサービスについて地域ブランド価値の評価分析方法を構築して、ケーススタディとして、先進県の山形県内の商品。サービスを中心に、国内・国際的視点から、地域ブランド構築のメカニズムを分析した。具体的には、実際の商品の品質だけでなく、銘柄、産地、歴史文化や自然、エピソード、食の安全、認証評価等が価値にかかわってくることを明らかにしている。高級果物さくらんぼ、高級米「つや姫」に続き、高級洋梨「ラ・フランス」のすべてにおいて、品質はいうまでもないが、「産地」が価値形成に大きな影響を与えていることが明らかにされたのは大きな成果である。 2)地域ブランド戦略を組み立てる上で、「潜在的地域ブランド価値」を生み出すためのシナリオ形成が重要であることもわかった。その中で芸術文化等の活用も重要である。実際のところ、産学官連携シンポジウムの中で、地域ブランド形成メカニズムを説明し議論したうえで、関係者と地域ブランド化のシナリオを組み立てて、実際に商品開発へと結び付けている。実務的にみても、地域ブランドの構築方法についての学問的な基盤に基づいて、地域・国家の成長戦略に役立てることが可能である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究プロジェクトでは、地域経済の視点より、地域ブランド商品・サービスについて、包括的な評価分析方法を構築することが目的である。地域ブランド価値の理論面と実証分析では、商品・サービスの価格には、品質だけでなく、産地や銘柄等のブランド価値がかなり大きく関与していることを説明することができた。実際の地域内総生産を高めるには、産地ブランド価値を高めることが重要であることを明らかにしている。具体的には、首都圏消費者について、高級果物の「さくらんぼ(佐藤錦や紅秀峰等)」、洋梨「ラ・フランス」、高級米「つや姫」の地域ブランド価値を測定した。地域ブランド戦略とは、現在は存在しない潜在的地域ブランドを構築することである。そこで、自然・歴史文化、商品エピソードの創造的なシナリオ展開により地域ブランド商品が誕生すること、さらにシナリオ展開が商品価値にも大きく左右される。品質はいうまでもなく、市町村・都道府県・国・世界レベルへと市場展開が可能な地域ブランド価値へと発展するかが重要である。そのため、産学官の地域向け連携プログラム(上山・米沢・蔵王・大阪等)の講演活動も強化している。知的財産権(商標等)で保護された地域商品やサービスに対して、地域ブランド価値を高める仕掛けを共有し、実際の商品開発(シルクカクテル等)にも結びつけている。また「情報戦略」も重要であり、地元の落語家や作曲家の協力の下、実際の作品(羽前山形(高級生糸)、丹波篠山(高級丹波鹿)、飯豊(どぶろく)、米沢・南陽(米沢織と白竜湖伝説))創作も行っている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究プロジェクトは3年目に入り、地域ブランド商品に関する良好な分析結果が出ている。第一に、高級果物の「さくらんぼ(佐藤錦や紅秀峰等)」、洋梨「ラ・フランス」、高級米「つや姫」の地域ブランド価値についての詳細な分析を行う。たとえば、アンケート時に分析を念頭においていた、東日本大震災における福島第一原発の風評に関する分析(「ラ・フランス」)についても行う。第二に、前年度までには、潜在的な地域ブランド価値を高めるための各種シンポジウム等を開催したが、今後も続けるとともに、潜在的ブランド価値に対しての実証分析を行う。潜在的なブランド価値においては、歴史上の人物および自然・文化遺産等について取り扱いと考えている。具体的には、日本最高級の繭や生糸の生産地であった「羽前エキストラ生糸」、さらに世界遺産の地域ブランド価値評価などもやってみたい。国土開発計画と自然・文化遺産の保全においてさまざまな問題が生じていることも取り上げたい。第三として、地域ブランドを考慮した都市経済モデルを組み立てる。都市経済学のモデルは、集積効果に関する理論をもとに都市の存在を説明しているが、地域ブランドを考慮した新しいモデルの構築も進めたい。 最後に、提唱する地域ブランド経済学と経営学の枠組みの下、産学官シンポジウム等の開催の様子とともに、これまでの成果をまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
実際には、地域ブランドに関する視察、地域ブランド価値評価に関するアンケート調査、成果報告の取りまとめ等で使用する。
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