研究課題/領域番号 |
23653063
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
丸山 真人 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (40209705)
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キーワード | 国際情報交換ナイジェリア / 国際情報交換ベナン |
研究概要 |
本年度は、ナイジェリア調査に関して、他の二つの受託研究(国際農林水産業研究センター受託研究「ササゲ子実品質に対する消費者および生産者嗜好性の調査」、および環境省受託研究(環境研究総合推進費)「持続可能な発展と生物多様性を実現するコミュニティ資源活用型システムの構築」)と重複する部分が出てきたため、昨年度明らかにした研究の推進方策のうち、商業作物および遊牧民に関する調査はこれらの受託研究で行い、本研究では「研究協力者ファブソロの所属するアベオクタの農業大学の研究者との意見交換、最新資料の提供を通して、農業開発に対する農耕民の意識についても調査する」という項目を中心に調査を実施した。なお、調査対象地域には、ナイジェリアの隣国であるベナン共和国を追加した。 ナイジェリアのアベオクタにある連邦農業大学では、2011年から「コミュニティに根ざした農業推進計画室」(COBFAS)を立ち上げ、ベナン共和国との国境地帯にあるオグン州イウォエケトゥ村で農業指導を行っている。ファブソロ博士はその副室長を務めている。本調査では、COBFASで基本的な情報を得るとともに、ファブソロ博士と同村に赴き、現地の首長および住民への聞き取りを行った。また、オヨ州エレクル村、アジボデ村を訪問し、そこで有機農業の普及活動を行っている指導者や農民への聞き取り、および農場の視察をおこなった。 さらに、ベナン共和国では、アボメ-カラヴィ大学農学部応用エコロジー研究所を訪問し、環境と調和した地域資源の循環利用を推進している研究者との意見交換及び資料収集を行うとともに、自然農法の研究と普及に力を入れているS.A.INの実験農場を訪れ、責任者から農場の仕組みと社会的役割に関する詳細な説明を受けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、人間の安全保障の主要課題の一つである持続的開発が、資源輸出国において確立されるための基本条件を、ナイジェリアおよびモンゴルの事例に即して解明することであった。とりわけ、それぞれの国における資源開発が自然環境および社会的文化的環境に与える影響を、開発の目標、対象、手段、規模、速度の各方面から具体的に把握することを目標としていた。そのうえで、開発のスピードを下げ、開発の規模を縮小することが、開発する側と開発される側の双方にとって長期的に有利となるかどうかについても、あわせて検討することを掲げていた。 本年度は、対象国をベナン共和国に拡張する一方、有機農業ないしエコロジー農業に対象を絞って調査を実施した。ナイジェリアの調査を通して浮かび上がってきたのは、国民の大半が農業で生活しているにもかかわらず、原油の輸出に極端に依存し、穀物の輸入に依存せざるを得ないという歪んだ国民経済の姿である。持続的開発の焦点は生活の自立と自存を高める農業開発の推進であることは明らかである。ベナン共和国を調査対象地域に加えたのは、ナイジェリアの持続的農業開発の核心をなす有機農業の普及活動が、ベナンにおける自然農法の開発促進活動と強い結びつきを持っており、地域資源の持続的開発という観点から見て、小国ベナンの知識が大国ナイジェリアに与える影響の重大さに着目したからである。 翻って、モンゴル国に関しては、研究協力者木村理子が文献資料収集を継続的に行い、昨年の政権交代後における資源開発政策の成り行きを見守った。基本的に、開発の速度を上げすぎないような配慮をうかがうことができたが、国際情勢に大きく依存している事実も確認された。 総じて、調査方法の細部において変更はあったものの、おおむね研究の目的は達成されたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
25年度は本研究の最終年度にあたる。過去2か年にわたって収集した資料の整理を行うとともに、新たな情報の収集に努める。また、前年度から持ち越しになっていた国際シンポジウムを実施し、研究論文をまとめるなど、本研究によって得られた成果を広く社会に伝えることに専念する。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度から持ち越しになっていた国際シンポジウムを開催するに当たり、外国人研究者を招聘するための費用の一部として使用する。
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