2012年度にベナン共和国の有機農業教育普及センターS.A.IN を訪れ、地域資源の循環利用システムの概要とその普及活動に関して聞き取りを行ったが、2013年度は、S.A.INの創始者が教育を受けた上部組織であるSonghai Centerで聞き取りを行った。Songhai Centerの本部は首都ポルトノボ郊外にあり、30ヘクタールほどの農場で、農作物、家畜、養魚を組み合わせた有機農業を実践しており、生産から加工、販売までを統合してエコロジーと調和のとれたコミュニティ農業を目指しており、そのための農民研修を行っている。聞き取りおよび資料調査により、Songhai Centerの活動はベナン国内にとどまらず、西アフリカ一帯に広がりつつあることが明らかになった。また、2012年度に引き続き、アボメ-カラヴィ大学農学部応用エコロジー研究所を訪問し、研究者と意見交換をおこなった。 3年間の研究調査を通して得られた成果のうち、ベナンの有機農業普及運動については、それがきわめてすぐれた教育研修システムに基づいており、18か月に及ぶ研修を受けた若い農民たちが着実に有機農業の実践者として育っていること、および、S.A.INの事例からもわかるように、研修者の中から新たな実習センターを立ち上げる人たちが生まれていることが明らかになった。他方、モンゴル国の資源利用に関しては、地下資源開発が環境に与える影響に関して、国レベルと地方政府レベルで落差があり、概して国レベルでの環境意識が高いのに対して、地方政府レベルでは開発志向が強く、環境影響への配慮を行う制度が未整備である実態が明らかになった。 総じて、有機農業運動のように地域資源の循環利用を基本とする開発は、それ自体が自然環境の保全と調和したスピードで行われるが、地下資源開発は制度的歯止めがなければ環境破壊を促進することが確認された。
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