研究課題/領域番号 |
23653066
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大坪 滋 名古屋大学, 国際開発研究科, 教授 (40247622)
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キーワード | 幸福 / 開発 / 成長 / 主観的指標 |
研究概要 |
本挑戦的萌芽研究に基盤を提供する基盤研究A(海外学術)での海外研究者ネットワークを活用しつつ、本年度も特に「開発と幸福」の総本山といわれるブータン王国のブータン王立研究所との共同研究を深めるとともに、2014年6月に国連のPost-MDGs決議案への草案提供を目指す、ブータン王国首相、国連事務総長諮問機関であるPost-MDGs準備委員会とも協調して政策指向の研究を進めた。また、国際協力事業団研究所(JICA研究所)客員研究者として、我が国の国際協力やその評価活動にも主観的貧困指標の概念を導入すべく、同研究所の研究員とも共同で実証研究を進め、その研究成果を公表した。 1)ブータン王国で開催された、ブータン首相および国際連合Post-MDGs準備委員会共催の New Development Paradigm for the Post-MDGs Era 草案準備会議に参加し、"Measurements and Determinants of Multifaceted Poverty" 論文の主たる分析結果を発表。 2)絶対的貧困、相対的貧困の概念での貧困の指標化し、またこれら客観的貧困指標を、主観的貧困の概念(Subjective Well Beingおよび主観的貧困判断)による主観的貧困指標と比較検討し、それらから得られる開発協力や開発における諸政策の注意点を洗い出す分析手法を開発。 これをインドネシアの家計調査や公共事業データ等と統合して試験的に実証分析。"Measurements and Determinanats of Multifaceted Poverty: Absolute, Relative, and Subjective Poverty in Indonesia" JICA-RI WP54 (国際レフリーによる査読付き)として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度は計画通り、開発と幸福研究の中心とされるブータン王国の王立ブータン研究所の研究グループ、我が国国内の開発と幸福研究研究者とのネットワークを張りつつ、データ収集や国際会議参加、国際共同研究ワークショップを開催した。ブータンで現地調査および国際学会(Economic Development and Happiness Conference)発表を行い、関連サーベイデータの解析を始めた。ブータン研究所から2名の研究者を名古屋大学に招聘し、共同研究を開始した。(国連事務総長の世紀の開発目標改訂準備グループと共同でその後4月初旬にNYでワークショップおよび国連会議を開催•参加した) 2年目の本年度は、当研究者が国際協力事業団研究所(JICA研究所)の客員研究員を務めたこともあり、国際協力や開発援助の実施や評価にも大いに関わる実証研究を、貧困概念の整理(絶対的 vs. 相対的、客観的 vs. 主観的)とその実用指標化(operationalization)の手法を確立しつつ行い、学術論文としてその結果を発表した。"Measurements and Determinanats of Multifaceted Poverty: Absolute, Relative, and Subjective Poverty in Indonesia" JICA-RI WP54は発表直後から内外の開発コミュニティで大変話題となり、今もJICA研究所からの研究学術論文のダウンロード数の記録を更新中である。 概念化と実証研究への応用から政策提言に繋がる有為な結果を埋めるのは最終年度の3年目からと考えていたが、前倒しで1つの結果を生むことができ、内外のPost-MDGsの開発議論に一石を投じる事が出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、インドネシアをケースにまとめられた分析手法、学術論文をブータン、ベトナム、タイ、ガーナなどの研究協力者の協力を仰ぎつつより多くの諸国でケース分析を行いたい。 科研Aで行われている7カ国のグローバル化の中での経済成長/不平等/貧困削減に関する研究において、各カントリーペーパーの中に「開発の目的」というセクションを設け、各国での「開発と幸福」への取り組みを紹介して行く。開発の目的を所得や消費貧困から主観的指標(生活満足度)に置き換えた場合の政策効果や制度等のコントロールファクターの推移も検証して行く。 これらの萌芽研究から得られた成果を基に、科研Aでの英文書籍出版において、関連するPartを設けて、開発目的の多様化とそれら多様化する概念を実証研究で捉え、今後の開発研究、開発援助協力に生かして行くべき方向性を提示する。よってPost-MDGs協議に一石を投じる。 この後は、本年度が最終年の科研A国際共同研究プロジェクトに、当萌芽研究で得られた将来の研究の方向性、新課題を組み込んでより大型の、多くの途上国の研究者も巻込んだ包括的な開発目的の実証評価研究プロジェクトの形成へ繋げたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
当萌芽研究での研究費は限られているが、本研究への研究ネットワークを提供している、基盤A研究の研究成果を英文書籍として出版する準備が進んでいるので、その中にひとつのPartを設け、多様化する開発目的や幸福等主観的指標、非経済指標を用いる概念と貧困削減や成長•発展の目的設置や評価にかかわる議論に関する本研究の成果をまとめて入れこみ、公表したい。 これへ向けて必要な国際会議や海外ワークグループへの出席、海外調査、論文作成、出版草稿準備等に最終年度の研究費を使用する。
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