研究課題/領域番号 |
23653070
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
江本 直也 日本医科大学, 医学部, 准教授 (50160388)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 行動経済学 / 糖尿病 |
研究概要 |
【目的】経済学的価値判断が糖尿病治療に影響するかを検証するため、患者の行動経済学的意識調査を行った。【方法】外来糖尿病患者100名、非糖尿病患者40名に行動経済学的アンケート調査を行った。アンケートは同意書とともに郵送で答ええることとし、協力患者には500円の図書券を送付するというインセンティブを設けた。アンケートは12の質問からなる。以下に一部を示す。(問1)あなたが普段お出かけになる時に、傘を持って出かけるのは降水確率が何%以上の時ですか。(問2)電車の座席指定を予約しているとき、電車の出発時刻の何分前に駅に着くようにしていますか。(問4)100分の1の確率で10万円当たる宝くじをいくらなら買いますか? (問5)問4のくじをもらった(拾った)とします。いくらなら人に売りますか?(問9)あなたを含む100人のうち、10年以内に心筋梗塞や脳梗塞になる人が何人の確率だと自分も心筋梗塞や脳卒中になると思いますか?(問10)10年以内に心筋梗塞や脳卒中になる人が50人だとします。病院では扱わないある薬を飲むと、その50人が25人に減ります。あなたは、毎月いくらなら飲み続けますか?【結果】非糖尿病患者(非DM群)のアンケート回収率が69.4%に対し、糖尿病患者のアンケート回収率は49.0%に留まり有意に低く、特に血糖コントロールの悪いHbA1cが9.4 %以上の患者では11名中3名のみ(27%)に留まった。比較的コントロールの悪いHbA1c 7.4%以上の糖尿病患者群(不良群)の特徴としては、提示された仮想報酬に対して定量的に数値で評価することを回避しがちであり、危険回避度の指標が低い値を示した。危険回避に支払うコストが現在の支払い額に強く影響されるという特徴がみられた。これは糖尿病患者の行動経済学的分析が糖尿病の治療介入に重要な示唆を与え得ることを初めて示した研究である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
糖尿病患者100名 非糖尿病患者40名、その他患者以外のボランティア21名にアンケートを実施し、回収されたアンケートは100名分であった。この人数においても、糖尿病患者において、血糖コントロール良好な群と不良な群に有意差を認めることができている。今後さらに人数を増やしてアンケートによるデータ収集を続ければ、さらなるコントロール不良患者の特徴を明らかにすることができると考えられる。3年間で糖尿病患者300名、非糖尿病患者150名のデータが得られる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は糖尿病患者200名、非糖尿病患者100名を目標としてアンケート調査を実施する。現時点で血糖コントロールの悪い患者では、提示された仮想報酬に対して定量的に数値で評価することを回避しがちであり、危険回避度の指標が低い値を示した。さらに危険回避に支払うコストが現在の支払い額に強く影響されるという特徴がみられた。この現在の支払い額に強く影響されるという特徴は、コントロールのよい患者にはみられないものの、非糖尿病患者にはみられている。このことから、血糖コントロールの悪い糖尿病患者は危険回避度が低いのではなく、非糖尿病患者と同じであり、むしろコントロールのよい患者たちは自分が糖尿病に罹患したときから、危険回避度を上げることができ、危険回避に支払うコストを他の要素とは独立して評価できる能力を獲得した可能性があると考えられる。さらにアンケート数を増やせば、この仮説検証できると考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
アンケートの謝礼に500円の図書券を配布する。アンケートは診察室で説明して手渡し、後日郵送にて返送してもらう。アンケート返送後、図書券を郵送し、受け取り証をさらに郵送してもらうことになる。これらの通信などの費用を含めて30万円。そのほか、事務用品、データのセキュリティを含めてコンピューター関係、印刷費などである。
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