研究課題/領域番号 |
23653074
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
赤井 伸郎 大阪大学, 国際公共政策研究科, 教授 (50275301)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 経済学 / 行政学 / 政治学 / 社会学 / プラット―フォーム |
研究概要 |
これまでさまざまな学問分野でなされてきた公共政策研究を、一つのフレームワークで捉え、学際的な見地から公共政策の在り方を考えることに、挑戦的に挑むことを目的に、研究初年度である2011年度は、研究代表者が在籍する大阪大学内部から、政治学者、行政学者、社会学者のメンバーに集まってもらい、私を含めた4人で、学問領域を超えた公共政策研究を語り合う研究会を立ち上げた。研究会では、毎回各分野の発表者が発表し、各分野の基礎的書籍・先行研究情報を共有し、情報収集を行った。詳細は以下である。 第1回研究会 2012年6月23日(木)「経済学と公共政策研究」、第2回研究会 2012年7月28日(木)「政治学の社会科学アプローチ」、第3回研究会 2012年10月27日(木)「社会学の社会科学アプローチ」、第4回研究会 2012年2月23日(木)「社会科学における行政学」 これらの研究会において、各分野のアプローチの違いについて、以下の点が、議論された。1)行政学、政治学、社会学いずれも、経済学のようなまとまった基礎という部分はない。(政治学と行政学では、行政学の方が、まだ、基礎となる部分が見えている。)経済学は、ツールが必要なので、それが基礎となる。2)経済学(理論)は、いろいろな仮定をおいて、結果を数式で導き出す。再現性がある。(=>誰でも、同じ仮定の下では、同じ結論が出る。理系に近い。)したがって、結果の違いが、全て仮定の違いとなり、仮定の妥当性が議論となる。3)経済学以外の学問は、数式では導出できない、その他の幅広い部分を議論することで、経済学とすみ分けている。また、経済学は、導出プロセスに仮定を置いて、結果を導き出している一方、他の分野の学問は、その導出プロセスおよびそこでの仮定を議論することが多い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
積極的に意見交換が行われ、他分野の前提・基礎概念・アプローチをお互いに、共有しあった。経済学的な視点から、それぞれの分野のアプローチを体系化し、新たな公共政策の在り方を考える上でのプラットフォーム《土台》を構築するための、基礎的情報の蓄積が進んだ。具体的には、以下の点が明らかとなった。◎経済学は、合理的期待がベース(一部、行動経済学はその点で異なるが、まだ厳格には確立されていない分野)となり、明日起きることも 今日想定して行動する。社会の一部にはこの合理的行動もあるが、全てではない。想定外のこともおきる。その場合には、日々、行動が変わる ことになるが、経済学で扱うことは難しい。一方で、その他の分野では、日々変わる現象を捉えているとも言える。(ただし、省庁間の折衝など、 明日起きることを想定して今日行動する事象も十分あると思うので、その場合は、経済学でも扱える。)◎行政学や政治学は、物事が起きていくプロセスを忠実に明らかにすることが目的。したがって、そのアプローチ手法も、対象事象で異なる。◎他の分野では、良いか悪いかは述べない。情報提供をするという学問のベースに沿っている。経済学も、情報を入手整理して提供することが一つの目的だが、最近は、成果を求められ、どうあるべきかを議論することが増えている。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、初年度と同様に、研究会を開催し、より幅広い分野の研究者との交流を進める。また、当初は、初年度に、国内外現地調査(米国・オーストラリアの公共政策大学院など)を行う予定であったが、時間的制約から実現しなかった。各分野の公共政策研究手法の整理を効率的に行うため、その分野で先駆的な研究を行っている研究者(学際研究を行う研究者)や機関(公共政策シンクタンク)に赴き、インタビューを行うことを実施したい。本年度後半から、来年度にかけては、各分野の公共政策研究手法・内容に関して、国内外の実態・事例についてのレポートを、分野ごとまたは地域ごとに執筆する。また、他分野の学会(法学会、行政学会、経営学会など)にエントリーし、学会発表を通じて、他分野の研究者と交流・議論をし、その前提・基礎概念・アプローチの妥当性を探る。各分野の研究者との意見交換の目的で、学際融合のワークショップを開催し、そのワ-クショップでも発表する。最終年度には、各分野の調査レポートをもとに、各分野の基礎概念・アプローチ・前提を探り、新たな公共政策の在り方を考える上でのプラットフォーム《土台》を構築する。その土台が構築できれば、学際分野の研究の発展促進はもちろんのこと、それを出発点として真に効果的な公共政策を提案・提言することができ、今後の研究に寄与する。
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次年度の研究費の使用計画 |
第一に、より幅広い分野の研究者との交流を進めるための研究会の開催において、招待者への謝礼や旅費に研究費を用いる。第二に、各分野の公共政策研究手法の整理を効率的に行うため、その分野で先駆的な研究を行っている研究者(学際研究を行う研究者)や機関(公共政策シンクタンク)に赴き、インタビューを行うなど、国内外現地調査のための旅費に研究費を用いる。第三に、得られた情報の整理などでアルバイトを活用し、効果的に情報収集やレポート作成を進める。第四に、他分野の学会(法学会、行政学会、経営学会など)にエントリーし、学会発表を通じて、他分野の研究者と交流・議論をし、その前提・基礎概念・アプローチの妥当性を探る。そのための旅費などに研究費を用いる。第五に、各分野の研究者との意見交換の目的で、学際融合のワークショップを開催し、そのワ-クショップでも発表する。ワークショップの開催費用として研究費を用いる。
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