研究課題/領域番号 |
23653074
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
赤井 伸郎 大阪大学, 国際公共政策研究科, 教授 (50275301)
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キーワード | 政治学と経済学 / 行政学と経済学 / 社会学と経済学 / 公共政策研究の経済学的評価 |
研究概要 |
昨年に引き続き、これまでさまざまな学問分野でなされてきた公共政策研究を、一つのフレームワークで捉え、学際的な見地から公共政策の在り方を考えることに、挑戦的に挑むことを目的に、研究2年目である2012年度は、研究代表者が在籍する大阪大学内部の政治学者、行政学者、社会学者のメンバーに私を含めた4人で、学問領域を超えた公共政策研究を語り合うために立ち上げた研究会において、外部からのゲストの発表をしてもらい、その内容について議論を行った。詳細は以下である。 第4回研究会 2012年5月24日(木)「地方自治/都市研究における社会科学アプローチ」、大阪市立大学 准教授 砂原庸介 第5回研究会 2012年11月29日(木)「日本の官僚制とその評価」大阪大学社会経済研究所 教授 常木 淳 これらの研究会において、以下の点が、議論された。経済学においても、地方自治の在り方は、多く議論されているが、それらは、規範的アプローチと実証的アプローチに分かれる。政治学・行政学においては、規範的アプローチと法制度アプローチに分かれることになる。経済学は、自治体間の特性をできるだけ排除し、一般的共通部分を見出し議論するが、政治学は、自治体における事情に着目する。例えば、特徴のある首長を分析するなどがあげられる。また、全く同じテーマ(自治体の合併)で同じ時期に書かれた2論文が全く相互参照されていない事実が紹介され、分析アプローチ手法の違いによる距離を感じさせた。また、日本の官僚制を、経済学的に評価することは、行政学の考え方を、経済学的に理解するうえで大変役に立った。 また、これらの活動に加えて、政治学と経済学の両視点での最先端の研究成果に触れ、研究者と議論を交わすために、政治学・経済学者が一堂に集まる国際学会である、PUBLIC CHOICE SOCIETYの世界大会に参加した。研究代表者も、論文を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年同様、積極的に意見交換が行われ、他分野の前提・基礎概念・アプローチをお互いに、共有しあった。経済学的な視点から、それぞれの分野のアプローチを体系化し、新たな公共政策の在り方を考える上でのプラットフォーム《土台》を構築するための、基礎的情報の蓄積が進んだ。 政治学、社会学、行政学、経済学を専門とする学者が参加しているが、参加者の間で、各専門分野の特徴についての基礎づくりができた段階に達成したと考えられる。合理的行動を想定する経済学と、起こった事実を忠実に整理する行政学・政治学、それらを融合しようとする政治経済学、より高所から、社会問題をとらえる社会学など、それぞれの専門分野における社会問題のとらえ方が、整理されてきた。同じ社会問題を分析していることも少なくない。各分野で得られた知識・情報について、それが共有されたり、議論されたりされていないとすれば、それは、非効率なことである。 次の段階は、より体系的にそれらを整理し、今後、これらの異分野が融合して、より高度な分析、効果的な政策提言ができるような土台をつくることである。どのような形で整理することが、今後の研究の融合に向けて大事なのか、まさに萌芽的研究にふさわしいテーマである。研究会では、これについても、議論しながらの1年であったが、その方法について、まだ明確な結論は出ていない。 また、「他分野の学会(法学会、行政学会、経営学会など)にエントリーし、他分野の研究者と交流・議論をして、その前提・基礎概念・アプローチの妥当性を探る」ことを計画に挙げていたが、これらの学会の開催日は、いずれも、毎年、研究代表者が専門とする学会と完全に重なっており、参加がかなわないままでいる。海外の学会にもチャレンジする予定であったが、これまた、所属する大学の入試日と重なり実現できていない。来年は、別の方策を考えたい。
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今後の研究の推進方策 |
今年は、最終年度の取りまとめに向けて、他分野の前提・基礎概念・アプローチを整理体系化し、新たな公共政策の在り方を考える上でのプラットフォーム《土台》を構築するため、これらの異分野が融合して、より高度な分析、効果的な政策提言ができるような土台とは何なのかを、メンバーで議論することから始める。その土台が構築できれば、学際分野の研究の発展促進はもちろんのこと、それを出発点として真に効果的な公共政策を提案・提言することができ、今後の研究に寄与する。最終年度の仕上げとして、各分野の研究者との意見交換の目的で、学際融合のワークショップを開催し、成果についての意見募集を行う方向である。 また、「他分野の学会(法学会、行政学会、経営学会など)にエントリーし、他分野の研究者と交流・議論をして、その前提・基礎概念・アプローチの妥当性を探る」ことを計画に挙げていたが、国内の学会に関しては、いずれも、毎年、研究代表者が専門とする学会と日程が完全に重なっており、参加がかなわないままでいる。海外の学会においても、PUBLIC CHOICE SOCIETYの世界大会に参加できただけである。その他の学会への参加は、今後も難しいと考えられるため、PUBLIC CHOICE SOCIETYの世界大会での成果を活かしながら、その他の部分は、研究会参加メンバーとの協議を深める方向で、内容を詰めていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。 第一に、研究会を開催し、その開催費用に充てる。また、より幅広い分野の研究者との交流を進めるための研究会として、招待者への謝礼や旅費に研究費を用いる。 第二に、得られた情報の整理などでアルバイトを活用し、効果的にFORMAT作成の準備を進める。 第三に、各分野の研究者との意見交換の目的で、学際融合のワークショップを開催し、そのワ-クショップでも発表する。ワークショップの開催費用として研究費を用いる。
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