研究課題/領域番号 |
23653079
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
小川 浩 神奈川大学, 経済学部, 准教授 (00245135)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 医療需要 / GIS / マイクロシミュレーション / 医療レベル |
研究概要 |
平成23年度は、待ち行列を基礎としたマイクロシミュレーションモデルの改良作業およびSaaSを用いたGISとの連携作業を主に行った。具体的な内容は以下の通りである。1. モデルの改良本研究のベースとなった(小川 2010)モデルでは、病院と診療所の差は医師数の差による扱える分娩の種類の違いだけである。具体的には病院は緊急帝王切開および予定帝王切開を含むすべての分娩を扱えるが、診療所は正常分娩のみを扱えるものとしていた。そのため、実際には診療所で完結するような正常分娩であってもシミュレーション上では病院に割り当てられるケースが発生し、結果として病院医師需要を過大に推計していたことになる。本年度のモデル改良では、(1)妊娠初期リスクスコア(中林ほか2006)の考え方とスコア分布を用いて妊婦検診を病院と診療所に確率的に割り当てる(2)病院医師の負担を減らすための参加オープンシステムを複数のレベル(分娩はすべて病院で行い、診療所の医師は自分の患者が分娩を行う際は必ず病院に行き分娩管理を担当する~妊娠後期でのリスクスコアで病院に紹介する妊婦を決める)でモデルに導入する、の2点を主に行った。2. GISとの連携シミュレーションとGISシステムの連携の前段階として、国勢調査の人口メッシュデータ、出生統計と、全国の病院住所データおよびGISのSaaS用いて、乗用車を用いた通院時間ベースの医療圏での分娩数を試算するシステムの構築を行った。このシステムから得られる医療圏ごとの分娩数は医師数予想のマイクロシミュレーションと組み合わせることによって病院配置プラン策定のために用いる予定である。移動時間計算用のSaaSを利用することにより、高速道路網による通院時間短縮などの影響も推計に取り入れることが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度予定していた研究内容のうち、シミュレーションモデルの改良およびGISシステムとの連携作業はほぼ予定通りに実施できた。しかしながら、シミュレーションモデルの前提となる産科医の勤務実態や分娩における医師およびその他のコメディカル需要に関するヒアリング調査は全く行えなかった。ヒアリング実施が行えなかった主たる理由は、計画立案時には予定されていなかった学内行政負荷の増加(学科主任への就任)である。当初の予定ではヒアリング先は各地方による差異がある可能性を考慮し北海道(札幌、釧路)、青森、長野、愛知、大阪、福岡、鹿児島などで行う予定であったが、上記の理由によりまとまった期間大学を離れることが困難になった。
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今後の研究の推進方策 |
現在の進捗状況の遅れを解消するために、以下の変更を行う予定である。(1)ヒアリング方法の変更現在の遅れの原因となっている学内行政負荷は24年度も同様に存在しているため、ヒアリングの方法および回数の変更を行う。具体的には、当初の計画では各地でのヒアリングを2回行う予定であったところを、a. 遠隔地については1回にする、あるいはb.ヒアリングに実際に行くのではなく、文書送付による調査や電話、電子メールなどの代替手段で調査を行う。などを検討している。(2)シミュレーション実装順序の変更当初の実装プランでは、GISのSaaSを用いた分娩施設配置最適化部分は医療需要推定部分が完成した後で実装する予定であった。しかしながらヒアリングが遅れることを考慮し、最適化部分の実装を先に行う。また、医療需要推定部分についても可能な限り医療需要モデルのモジュール化を行い、前提条件がヒアリングで変化した際の全体への影響を小さくするような実装を検討している。
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続きGISのSaaSを利用する。また、当初計画より遅れてはいるものの、モデルのキャリブレーションを行うため可能な限りヒアリングを行う予定である。
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